――李容洙氏も会見で「挺対協が30年間、自分を利用してきた」と発言しています。
ハルモニの中でも、李容洙氏はとても政治性の強い方なんです。「彼女は運動家になった」と言う人もいたほどで、元慰安婦のハルモニの中でも積極的に活動していた。ですから、「李容洙氏が善で、尹美香氏が悪」という簡単な話ではありません。李容洙氏は挺対協と一緒に最前線で慰安婦運動に参加して、アメリカの議会で演説までした尹氏の同志です。
ただそんな彼女ですら、尹氏に対して「利用された」と発言せざるを得ない状況だったとも言えます。
過去にこんなことがありました。「アジア女性基金」が1995年に作られたとき、日本側が元慰安婦のハルモニたちにお金を受け取ってもらえるように説得していました。その結果、97年1月には7人のハルモニがお金を受け取った。ハルモニたちは高齢で、この問題に恨みを持っていても「ある程度の線で自分の要求が解決されればいい」という思いもあったのです。ところが挺対協は、彼女たちを非難した。「そのお金を受け取れば日本政府に免罪符を与える」というのが理由です。
そのとき、当時の挺対協の共同代表だった尹貞玉(ユン・ジョンオク)・梨花女子大教授の言葉が忘れられません。
「アジア女性基金のお金をもらう人(ハルモニ)は、自ら進んで出かけた公娼であることを認めることと同様だ」
そこまで侮辱的な発言をしたのです。そんな風に糾弾をされたら、ハルモニたちは、慰安婦運動家たちの論理に合わせて動かざるを得ないですよね。97年の時点で、すでに元慰安婦と女性活動家の関係が主客転倒していたのです。
その20年後にも同じ事態が起きました。2015年に朴槿恵大統領と安倍首相との間で交わされた慰安婦問題についての日韓合意のときです。この合意でも当時生存していていたハルモニたち47人中34人がお金を受け取っていました。支給を担当した「和解・癒やし財団」は慎重に作業をしていて、ハルモニたちに個別に接触し、一人一人の意思を確認して支給しました。
しかし、挺対協はこのときもまた、お金を受け取った人を「罪人」のように扱った。メディアも、少数でも声の大きい挺対協に同調するハルモニを取り上げるので、あたかも合意反対派が多数派のように報じました。結果として、挺対協という一民間団体が拒否したことで、合意そのものも無力化されてしまいます。
そうやって元慰安婦たちは、運動家の主張を代弁させられていった。いわば、挺対協の活動のために“操縦”されることになったのです。
正義連は文在寅政権の“大株主”
――文在寅大統領と正義連は、どのような関係ですか?
正義連は、文大統領と与党「共に民主党」を支えている利益集団、もしくは圧力団体の一つです。韓国の最大の労働組合である全国民主労働組合総連盟(民主労総)、日本の日教組に相当する全国教職員労働組合(全教組)などと並んで、政権の“大株主”とも言えます。