それにしても、度を超えている。
2度にわたる記者会見で正義連(「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯」)と前理事長、尹美香議員(6月1日から)を告発した元慰安婦の李容洙さん(91歳)へ、“身内”ともいえる進歩層からの罵詈雑言が飛んでいる。
「人身攻撃のような噂の類いの疑惑提起へ屈服してはならない」(聯合ニュース、5月27日)
与党が尹議員を死守する異常な光景
李海チャン「共に民主党」代表のこの言葉を韓国メディアは「尹議員を死守」と表現した。李党代表は尹議員が行った釈明会見についても、「疑惑はそれなりに釈明できたようだ」(国民日報、6月2日)と評価。300議席中、177議席を持つスーパー与党には怖いものはないらしい。
尹議員が記者会見を行ったのは新国会が始まる1日前(5月29日)。11日ぶりに姿を現した尹氏は40分近く、用意してきた原稿を読み上げ、質疑応答を行った。しかし、疑惑解消にはほど遠い内容となった。「ようは、やましいことはしていない、国会議員は辞退しないという2つを言いたかったがために出てきた」(政治評論家)と皮肉られる始末。しかも会見の場所は国会疎通館だった。中道系韓国紙記者は苦笑する。
「まだ国会議員でもないのに国会で記者会見を行い、与党議員が記者会見の質疑応答では割って出た。これだけでも異常な光景。与党が尹議員を死守する姿勢が鮮明となった」
「(李ハルモニは)認知症だ」
韓国では連日報道されるなど世論の関心は高く、70%が「尹氏は国会議員を辞退すべき」と回答した世論調査結果(世論調査会社「リアルメーター」5月28日)も出た。与党内部からも、会見について「検察の取り調べを控えているとはいえ、募金を集めた個人口座を見せるなどもなく、十分な内容ではなかった」という声もあがったが、他の与党議員や進歩層からは李さんへの罵詈雑言がそれこそ矢のように乱れ飛んだ。
「(李ハルモニは)認知症だ」「呆けている」「大邱ばあさん」「親日ばあさん」「(国会議員になれなった李ハルモニの尹議員への)嫉妬はきりがない」「大邱(人)らしい」「強欲に満ちたばあさんを偉人に仕立て上げ詐欺芝居か」などの嘲罵がずらり。「大邱ばあさん」というのは、李さんの出身、保守の牙城である大邱市を揶揄したもの。大邱市は朴槿恵前大統領のお膝元でもあり、有権者は「投票は目をつむったまま無条件に保守に入れる」といわれ、4月の総選挙では与党議員をひとりも輩出していない。