文在寅政権は尹議員と一心同体
尹議員への疑惑が真実なのか否かは検察捜査を待たなければならないが、そもそも、尹議員自身も不適切だと認めた、個人口座で募金を集めたことだけでも国会議員としては不適切だろう。与党内部でも同じような話がでているというが、前出記者はこう言う。
「文在寅政権は『被害者中心主義』を前面にだして、日本との『慰安婦合意』に異議を唱える立場でスタートしましたから、合意に反対していた尹議員とは一心同体の仲といってもいい。李海チャン党代表が市民団体運営の困難さについて触れているように、個人口座もお目こぼしの範囲なのでしょう」
慰安婦問題を振り返ってみると、ターニングポイントとなったのは2011年8月。韓国の憲法裁判所で「慰安婦問題を解決しようとしない不作為は憲法違反」とした判決がでてからだ。当時の李明博大統領はにわかに日本に解決を迫り、日韓関係が悪化したのは周知のとおりだ。
そして、2015年12月には慰安婦問題で日韓が合意し、日本が10億円を拠出して「和解・癒やし財団」が設立された。ところが、文政権に入り、2018年11月に解散を決定。文政権は日本とは再交渉しないとした。前出の弁護士は言う。
「日本とは再交渉しないとしましたが2011年の判決により韓国政府へ課された解決努力はまだ続いています。被害者中心主義に則るならば李ハルモニとも話し合わなければ筋が通りません」
日本と共に解決したい
李さんに近しい人物はこんなことを言っていた。
「そもそもその頃から李ハルモニは日本を糾弾するのではなく、どうやって共に解決していけるのかという話をしきりにしていました。反日を前面に押し出していた尹議員とは意見の衝突がもともとあったのです」
その李さんは会見では、「韓日の若い世代が共に歴史を学んでいけるような仕組みを作ってほしい」と訴えていた。
慰安婦問題で自縄自縛にも見える韓国政府は、李さんが投げかけたこの命題にどう答えるのだろうか。
李さんの告発による一連の動きは奇しくも、韓国の進歩層の変容と今の素顔をさらけ出させた。前出の韓ソウル大学名誉教授は今の進歩層をこう表現している。
「進歩はこれ以上市民社会を代弁する過去の進歩ではない」「最近では国家権力と自身を同質化する傾向を示している」(中央日報、5月28日)。