5月23日、人気番組『テラスハウス』に出演していた女子プロレスラー、木村花さんが亡くなった。生前はバッシング被害に悩まされていたと伝えられている。

木村花さん ©getty

2019年3月時点でリアリティ番組の自殺者数は38人

 視聴者参加型番組とバッシングにまつわる議論は、数年前から海外で活発になっていた。英紙Metroによると、2019年3月時点で同様の番組キャストの自殺者数は38人にのぼる。中でも痛ましいとされるケースは、インドのダンス・コンテスト番組に出場した11歳の少女ネハ・サマントの遺体が首を吊った状態で発見された事件であった。

 国家機関が介入したケースもある。国民的人気番組から相次いで自殺者が出たイギリスでは、テリーザ・メイ、ボリス・ジョンソンがともに首相として対応を約束。2019年5月には、リアリティ番組制作陣に対してプロセスの透明化や出演者へのアフターケアに関する調査報告を義務化する規制が議会によって成立した。

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 イギリスのTVは、どんな状況だったのか。まず留意すべきは、同国で人気の視聴者参加型番組が『テラスハウス』よりも過激なことだろう。こちらの記事で紹介したように、英米において『テラスハウス』が注目を集めた一因には「礼儀ただしい人々による平和な内容」が珍しがられたことにある。

自殺者が続出したイギリスのTV番組の実態

 一方、参加者たちの共同生活を映すイギリスのTV番組は「リアリティショー」と呼ばれることが多く、乱れた性生活や激しい喧嘩など過激さを売るものが多い。視聴者投票によって脱落者が決まる2000年代の人気番組『ビッグ・ブラザー』シリーズでは、男性陣の前でワインボトルを使った自慰行為に挑戦する女性も出てくる状況だった。

 2010年代イギリスで合計3名もの自殺者が出た人気番組が、美しい若者たちが共同生活を送る『ラブ・アイランド』だ。このリアリティショーは「人間のもっとも醜悪な部分の繁殖地」と形容されている。

 内容を大まかに言えば、参加者たちがカップルになり5万ポンドの賞金をめがけて競う内容で、視聴者投票によって脱落者が決定される。要するに、視聴者の機嫌をとるため、参加者たちが率先して修羅場や騙し合いを巻き起こすよう設計されているのだ。