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番組中、30回もの性行為を行った出演者は億万長者に

『ラブ・アイランド』は、2015年に始まって以降「文化現象」とされるほどの人気を博していった。16~34歳のTV視聴者のうち40%がこの番組を見ていたとするデータもある。

 出演をきっかけに大成したキャストも出た。番組中、30回もの性行為を行って話題をつくったオリヴィア・ボーエンは、レースこそ準優勝に終わったものの、その後アパレルブランドや主演リアリティ番組を興していき、5億円ほどの資産を築いてみせた。『ラブ・アイランド』に出る前は借金苦で食べることすら苦労していたというのだから、相当な成り上がりだ。

 無論、出演を望む若者も数多い。2019年の出演者オーディションには応募開始24時間で6万人もの応募が殺到したという。「参加者みんな、お金持ちになって人生が楽になると思ってるんだ」。そう語るシーズン3参加者ジョニー・ミッチェルは、番組を「インスタント名声マシーン」と呼んだ。

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国民的番組となり、3人も自殺者が

 国民的番組となった『ラブ・アイランド』に対する批判は増大していく。大きな発端となったのは2018年、シリーズで初めて同性とカップルになったのち、バッシング被害に苛まれている旨を明かしていたシーズン2出演者ソフィー・グラドンの自殺である。彼女の遺体を発見した恋人も20日後にあとを追った。

 翌年には、シーズン3にて演じた「暑苦しい男キャラ」像が定着してしまい悩んでいたとされるマイク・サラシーティスが26歳の若さで亡くなった。自殺者の連続発生を受けて、ソフィーの母デボラはリアリティ番組ビジネスを糾弾した。「弱き人々の悪用をいつやめるのか。リアリティ番組は、最も邪悪で幼稚な娯楽形式だ」「これらの番組は血塗られた残酷劇場……恥を知れ」。

ソフィー・グラドン ©getty

 リアリティ番組が孕む問題として「急速な名声」が挙げられる。一般人に近い参加者が出演を機に一気に知名度を上げると、専門的な対策無きままにインターネットやメディアから罵詈雑言を浴びることとなり、甚大なダメージを負いやすいのだ。そして、軋轢や凋落、予測不能な展開を売りにする類のリアリティ番組は、ことさらバッシングを生む。

リアリティ番組は攻撃的な反応を生みやすいとする調査も

 アメリカでは、攻撃的な争いを売りにする監視型リアリティ番組が(暴力的なフィクションよりも)視聴者の攻撃的な反応を生みやすいとする調査結果も出ている。また、英国社会では「自ら出演を選んだのだからバッシングされるのも自己責任」といった向きも根強いとされる。

 多くのリアリティ番組が「ヤラセ」とされることも重要だ。UK版Cosmopolitanでは、制作側がまずストーリーを決定し、それに沿う「キャラクター」として参加者を採用するケースが多いと報告されている。ヌードや性行為、喧嘩といった過激な行動のオファーを受けたキャストに追加報酬が払われるパターンもあるようだ。

 視聴率をとるための「物語」が決められている現場では、ハラスメントも横行しやすくなる。『ラブ・アイランド』にしても、参加者を「動物」のように扱うプロデューサーがカップルを決めた上で贔屓のキャストばかりを映し、ときにはキスシーンを4回も撮り直すような状況だったと告発されている。