その3)敵・脇キャラでも骨太のドラマが用意されている
さらに、主人公・犬夜叉を取り巻くキャラクター達や、彼らが織り成すドラマもまた魅力となっています。数あるなかでも特に、秋から放送予定の新作アニメとの繋がりも噂されている、犬夜叉の異母兄である妖怪・殺生丸と、彼を慕う人間の少女・りんによる、妖怪と人間の種族を超えた関係は、ファンの中でも人気が高いです。
妖怪として、常に人間を見下し冷酷な態度を見せていた殺生丸ですが、第35話で、戦いで傷つき倒れているところを人間の少女・りんに救われます。それから、どんなに邪険にしても健気に食べ物を持ってくるりんに徐々に心を許していく殺生丸でしたが、りんが狼に襲われ、あっけなく死んでしまいます。「邪魔だ」という理由だけで容赦なく殺してしまうほどに人間嫌いだった殺生丸でしたが、倒れたりんに、その笑顔を思い出し、自らの刀の能力を使って彼女を蘇生させるのです。
この出会いをきっかけに人間と種族を超えた、殺生丸とりんによるドラマが進んでいきます。多くは語らずとも、確かな慈しみを持ってりんに接するようになる殺生丸の変化は、物語全編を通してのハイライトです。
作品を多角的に楽しむ女性ファンとの親和性
こうした主人公以外の膨大なキャラクター達が紡ぐ兄弟、家族、仲間、ライバル、敵味方、師弟といった様々な関係性とそのドラマは、妖怪とのバトル活劇といういかにも少年漫画な展開にドラマチックな一面を加え、女性ファンをも夢中にさせる魅力となっているのでしょう。そして、こうした“魅力的なキャラクター”と“キャラクター同士の関係性”こそ、前述した「鬼滅の刃」を始めとする“女性人気も高い少年漫画” の共通点の1つと言えます。
“魅力的な”つまり“推せる”キャラクターが一人以上いて、かつそのキャラが“キャラクター同士の関係性”の中で熱いドラマをみせる作品というのは、それらを燃料に、推しのグッズを買ったりコスプレをしたり、創作活動をしたり仕事中や授業中にキャラ達の行く末を妄想したりと、えてして“作品を多角的に楽しむ女性ファン”との親和性が極めて高いと考えられるからです。
今回は女性に人気の要素を中心に紹介しましたが、それらは「犬夜叉」の魅力のほんの一端にすぎず、本作には妖怪達との手に汗握るバトルや、修行に武器に必殺技といった少年漫画らしい面白さももちろんつまっています。さらに秋から始まる新作アニメは、メインキャラクター達の子供世代が主役の物語です。原作の完結時点まで描かれたテレビアニメが動画配信サービス・Netflixにて全話を視聴できる今、まだみたことがない人や、どんな内容だったか忘れてしまった人は、おうちじかんのお供に視聴してみるのはいかがでしょうか。前作にあたる「犬夜叉」を履修すれば、より感慨深く味わえること間違いなしです。