先月、ネット上で“少年漫画を描く女性漫画家”が話題になりました。原作累計発行部数6000万部突破の人気漫画「鬼滅の刃」の作者・吾峠呼世晴氏の性別を巡る報道に端を発したものですが、「鋼の錬金術師」の荒川弘氏をはじめ、少年漫画を描く女性漫画家はそれほど珍しい存在ではありません。
数々の人気作を生み出してきた高橋留美子氏もそんな女性漫画家のひとりです。実は現在、彼女の代表作のひとつである「犬夜叉」が、続編となる新作テレビアニメ「半妖の夜叉姫」の製作発表を受け、原作完結から10年以上の時を経て再び注目を集めています。
女性人気も高い少年漫画が持つ“キャラクター設定の妙”
「犬夜叉」とは、妖怪などの魑魅魍魎がはびこる戦国時代を舞台に、現代からタイムスリップしてしまったヒロイン・かごめと、人間と妖怪の子=半妖である主人公・犬夜叉が、あらゆる願いを叶える宝玉・四魂の玉を巡り、共に旅をしながら敵の妖怪達との戦いを繰り広げていく戦国御伽草子です。1996年から2008年に週刊少年サンデーで連載され、2度のテレビアニメ化も経て人気を集めた本作は、原作やアニメが完結した今でも、舞台化やアプリゲーム化といったメディアミックスが行われています。
少年誌で連載されていたのもあり、もちろん男性人気も高いのですが、本作は同じくらいかそれ以上に、女性ファンが多いのも特徴です。『少年漫画が女性に人気?』と不思議に思う人もいるかもしれませんが、同様に女性人気が高い少年漫画は多数あり、例えば前述の「鬼滅の刃」についても、女性人気の高さは各所で指摘されています。そしてそれらの共通点は、どうやら“キャラクター”にありそうなのです。女性人気も高い少年漫画が持つ“キャラクター設定の妙”を、アニメ「犬夜叉」の実際のシーンから探ってみます。
その1)王道要素があっても“一筋縄じゃいかないキャラクター”
物語や世界観はもちろん、「このキャラのことをもっと知りたい、行く末を見守りたい」と思うキャラクターがいることで、作品への愛着やのめり込み度合いは増します。その意味でこの「犬夜叉」は、敵味方共にそんな魅力的なキャラクターが盛りだくさんです。例えば主人公の犬夜叉は、荒くれもので時に優柔不断、ヒロイン・かごめからエピソードを聞いた友人らは彼のことを“ワガママ二股暴力男”と表します。
実際に、ヒロインのかごめと桔梗という女性キャラクターの間で揺れ動き、どちらを選ぶのかを迫られた第1期・第23話では、悩んだ末に「両方(かごめと桔梗)っていうのは駄目なのか?」と、多くの女性を敵に回しそうな“二股宣言”をします。まだ作品に触れていない方は、「最低じゃないか!」と思われるかもしれませんが、それだけじゃないのがこの「犬夜叉」が女性読者から愛されるポイントになっています。