「あーー。それはあるな」と思ったわけ
そして、今回のA子さん問題では見城徹さんや箕輪さんを含む幻冬舎全体のビジネストラブルまで暴露されることになるのですが、出版業界やそこから派生したウェブニュース業界というのは、往々にして昔ながらの「そんな発注はしていない」とか「入稿してもらったけど、期待する品質になってないから受け取らない」といって、下請法違反ど真ん中の未払いが一部存在しているのもまた事実です。
私も書き手として、いままで何度も「入稿したのに原稿をボツにされて100円も入金されない」ということは経験してきましたし、発注する編集者と、泣きながら締め切りを守って記事を書く書き手の間の力関係を考えれば、平然とこういうことは繰り返されるのですよ。
発注を請ける側は、基本的に次もまた発注してくれることを期待して、相手の機嫌を損ねないように立ち回り、泣き寝入るしかありません。いくら腸(はらわた)が煮えくり返っていたとしても、笑顔で対処するんですよ。頭を下げるのは相手の判断や能力や人格ではなくて、その会社の看板であり売る能力であり「そこの会社と付き合っている作家、ライターである」というブランド力です。何がアカンかったかなと記事を酒飲みながら読み直して、これを評価できないお前らが馬鹿だと愚痴を垂れながら枕を涙で濡らしてフテ寝するんです。
繰り返される私の没原稿フテ寝事件の話はどうでも良くて、「プロデューサーや編集者から依頼を請けて制作物を納品する」という仕事において言えば、見切り発車は多いし、「やるという仕事がなくなったので払わない」、「受け取ったけど気が変わったので品質が悪いということにして払わない」、「後から他の人に発注したので払わない」なんてことはパワハラ以前の問題としてあります。だからこそ、A子さんが箕輪さん問題で行った告発は「あーー。それはあるな」と私は思っちゃうわけですね。もうね、身近にあるあるすぎて。
ご本人たちの釈明や見解は別にして、業界全体でそういう異常な発注でも罷り通ってしまう慣行はやめたほうがいいと思います。
まだ出てもいない本をAmazonランキング1位に
さらには、箕輪さん問題というのは、凄い能力のある箕輪さんが全力で著名な書き手のゴーストを繰り広げている、また著者との壁打ち(著者と編集者とのテーマの作り込み)も相当に頑張ってやっている、という中で、NewsPicksや箕輪編集室のような読み手の「イケス」を使って強引に本を売りに行く手法の是非でもあります。
いわば、「AKB商法」と言われた、出したCDに握手券を突っ込んで、ファンに何枚もCDを買わせる仕組みと同様に、NewsPicksの識者同士で「この本は素晴らしい」「この著者は凄い」とお互いに胴上げして成層圏を突破する一方、無邪気にそういう人たちの推奨を信じる一般の人たちのイケスに向けて書籍をぶん投げて1万、2万と売る。さらには、そういうイケスにいる人たちを動員して、まだ出てもいない本を「Amazonランキング1位にしよう」とTwitterでセールスを仕掛ける。
こういう本の中身よりも著者とタイトルと売り方にフォーカスして、次々とベストセラーを作り上げていくのが箕輪流であって、それができちゃうのもまた箕輪厚介の天才性であったとも言えます。こんなことをコンスタントにできる編集者はいないし、出版社がやろうと思っても実現できないんですよ。