文春オンライン

箕輪厚介氏「セクハラ問題」に見る、成り上がりとコンプレックスと業界あるある話

2020/06/08
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「NewsPicks」の集客力を使ってスター著者を育てる

 そして、箕輪さんは出版社・幻冬舎の金看板を掲げながら、ビジネス界の実名2ちゃんねると名高い「NewsPicks」の集客力を使って数々のスター著者を育てていきます。一時期は大変成功したこの手法は、まさに熱狂的で爆発的な制作能力を持つ箕輪さんの独壇場とも言え、堀江貴文さんにいたっては本人が原稿を執筆しておらず、校正で一度しか読んでないのに自分の名前で本が出て、それはほぼ全部箕輪さんの執筆によるものであるという、もはやゴーストライターがゴーストにすらなってないというレベルでコペルニクス的な所業までやってのけます。

 これ、信頼関係があるとか、ビジネスの構築力がどうとかいう話ですらなく、究極の粗製乱造をマーケティングでしっかりと売り切る仕組みであると言えます。だって、担当編集者自身が「5時に夢中!」(TOKYO MXテレビ)などで「(堀江氏)本人は一文字も書いていない」と豪語する本が、『堀江貴文・著』となり、幻冬舎から出て、TwitterやNewsPicksで煽られれば信者が鈴なりになって買ってくれてベストセラーになるんですよ。

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 さらには、そういうNewsPicksや著者のコミュニティをテコにして、有料サロン・箕輪編集室を立ち上げ、我こそはと思う市井のワナビーの皆さんをかき集めておカネを取り、一介の編集者なのに毎月600万円以上の売上があると豪語するビジネスの仕組みを作り上げます。

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 もちろん、箕輪さんというのは媒介となる編集者に過ぎないのですが、この人と一緒にいると、きっと何か仕事が回ってきたり、凄い人と知り合いになれそうというハロー効果(錯覚資産)を駆使してビジネスに仕上げていくわけですよ。もちろん、そういうところに参画して生き生きと楽しく社会人サークルを楽しめる人からすれば大満足ですし、それが参加者の納得を得られているのであれば問題ありません。

「どれだけ幻冬舎を利用してきたと思ってるんだ」

 しかしながら、さすがにNewsPicks(ユーザベース)側も馬鹿ではなく、これはいつまでも続けられないし、自前の編集部を作ったり、他の出版社とも連携を取らなければ幻冬舎に母屋も取られかねないと危惧します。昨年、NewsPicksはやんわり距離を取る申し入れを幻冬舎にしたところ、見城徹さんがマジ切れ大激怒。ツイートで見城さんが「どれだけ幻冬舎を利用してたと思ってるんだ」とぶちまけるに至ります。

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 もちろん、第三者の目からすれば当時1か月のビジネス系読者360万人以上を抱えるNewsPicksを利用していたのは幻冬舎のほうなのですが、見城徹さんに言われたら何となく「あっ、そうなのかな?」という迫力があるんですよね。なんかこう、向こうの山の上からもくもくと積乱雲が上ってきたぞー、みたいな。