プラスチックごみの削減を目的として導入される「レジ袋の有料化」。賛否や疑問の声が上がるなかで推し進めるべき政策なのか。そもそも、レジ袋を有料化し、プラスチックごみを削減することで、私たちは環境に好影響を与えられるのか。
極論や夢物語では解決できない環境問題に真正面から向き合った『海洋プラスチック 永遠のごみの行方 』(角川新書)より、現状の問題点を整理する。
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生産されたプラスチックは原油の3%
一般社団法人「プラスチック循環利用協会」の資料によると、2018年に生産されたプラスチックの重量は、原油以外にナフサとして輸入したぶんも考慮に入れて、もととなった原油の重量の約3%にあたるという。
一般財団法人「日本エネルギー経済研究所」の石油情報センターによると、原油から精製された石油の用途は、火力発電所で燃やして電気をつくったり家庭の暖房に使ったりする「熱源」としての利用が4割、自動車や飛行機、船などを動かす「動力源」としての利用が4割で、残りの2割がプラスチックや洗剤のような製品の原料になる。つまり、全体の8割が燃料として使われていることになる。
この数字をみて気づくのは、プラスチックの使用量を減らせば、もちろんプラスチックごみを減らす効果はあるだろうが、原油の節約にはあまりならないという事実だ。原油の使用量を減らしたいなら、全体の3%でしかないプラスチックより、燃料として使われる原油を減らすことに力を注いだほうが効果的だ。
環境問題の手段と目的を考える
いま考えようとしているのは、プラスチックごみを減らすことなのか、それとも原油を節約して限られた地球の資源を守ることなのか。このふたつは無関係ではなく、両方とも大切なことではあろうが、考え方の筋道としては、とりあえず分けて考えたい。そうしなければ、目的と手段に食い違いが生まれ、プラスチックごみを減らそうという一人ひとりの行いがどこに向かっているのかが、よくわからなくなる。割り切れないモヤモヤ感を抱えたまま、走り続けることにもなりかねない。
日本が進めるレジ袋有料化では、レジ袋の原料に重さにして25%以上のバイオマスプラスチックが含まれていれば、有料化の義務から免除される。バイオマスプラスチックとは、石油ではなく植物などをもとにつくられるプラスチックだということはすでに述べた。土の中や海に放置されたとき自然に分解が進む生分解性プラスチックとは違う。バイオマスプラスチックを広める目的は石油の節約や地球温暖化の抑制であって、ごみとなって環境を汚すプラスチックを減らすことではない。レジ袋有料化の指針を示す環境省のガイドラインにも、免除の理由は「地球温暖化対策に寄与する」ためと明記されている。
レジ袋の有料義務化は、いつまでもごみとして地球を汚し続けるプラスチックの使用を減らそうという文脈のなかで生まれた。バイオマスプラスチックは環境中で自然に分解されるとはかぎらず、いつまでも地球を汚し続ける。それならば、バイオマスプラスチックがこの有料化をまぬがれる免罪符のように使われるのは妙な話だ。