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「ライフサイクルアセスメント」を考える

 プラスチックごみが地球を汚し続けるのは、たしかに困る。しかし、地球の環境に悪さを与えている要因は、それ以外にもたくさんある。地球温暖化を進める二酸化炭素などの温室効果ガス、大気汚染を引きおこす窒素酸化物、水質汚濁の原因となる油、……。実際にごみ対策を進めるには、これらの要因を、プラスチックの製造や輸送、販売などの各過程でチェックして、地球環境への影響を全体として評価する必要がある。プラスチックボトルの代わりにガラスびんを使えば、重くなるので、輸送トラックは余計にガソリンを食う。どうすれば環境への負荷をトータルで減らすことができるのか。そうした量的な評価を「ライフサイクルアセスメント」という。

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 この考え方を使うと、たとえば、つぎのようなことがわかる。家庭から出るプラスチックの容器や包装の素材を、原料が植物由来で生分解性でもある「ポリ乳酸」に替えた場合、製造から廃棄までの過程で排出されるプラスチック1立方メートルあたりの温室効果ガスの量は14%削減される。製造段階では排出量が増えるが、廃棄のときが大幅に減る。ただし、レジ袋については、廃棄段階での削減効果があまりなく、トータルでは温室効果ガスの排出量が増える。したがって、レジ袋の場合は、どのような代替素材にすべきかをよく考える必要がある。

バイオプラスチックの使用が絶対解ではない

 これは、2019年の廃棄物資源循環学会誌に掲載された、京都大学の酒井伸一教授の「3Rプラス原則とライフサイクル的観点からみたプラスチック素材」という論文に書かれている例だ。排出する温室効果ガスを減らすという観点でみた場合に、プラスチックに代替素材を使う際の問題点が、ライフサイクル全体のなかでどこにあるのかが具体的にあきらかになる。「新しくバイオプラスチックを使うんだから環境によさそうだ」ではなく、その長所と短所、使う場合に克服すべき課題が客観的に示されるのだ。

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 レジ袋については、一般社団法人「プラスチック循環利用協会」が、「LCAを考える」という冊子のなかで、つぎのような報告例を紹介している。「LCA」はライフサイクルアセスメントのことだ。