マイバッグを使う意義
ここでは、繰り返し使えるポリエステル100%のマイバッグと、ポリエチレン100%のレジ袋のそれぞれ1袋について、原料の採掘から焼却処分するまでに、どれくらいの二酸化炭素を排出することになるかを計算している。その結果、マイバッグはレジ袋の約50倍の二酸化炭素をだすことがわかった。つまり、マイバッグの繰り返し使用回数が50回のとき、二酸化炭素の排出量については、レジ袋の使い捨てとほぼ同量になる。二酸化炭素の排出減を地球に対する「やさしさ」の指標にするなら、マイバッグは、それ以上の繰り返し使用が必要だ。
マイバッグは重さもレジ袋の約10倍なので、心して繰り返し使わなければ、ごみは増えるし二酸化炭素も余計にだすことになる。とても雑な言い方になるが、プラスチックごみの量という観点からは、マイバッグは10回以上は繰り返し使う必要があり、二酸化炭素の排出を抑制するという観点からは、もっとハードルが高くて、それが50回ということになる。
現実を客観的に分析することが必要
このように、プラスチックごみの問題を解決するといっても、それ以外にも考えるべきことはあり、一筋縄ではいかない。数量的な考え方を導き入れると、それがはっきりしてくる。また、地球の環境を守りたいという目的があったとしても、とにかくプラスチックごみによる環境汚染を優先的に抑えたいのか、あるいは、温室効果ガスの増加による地球温暖化の進行のほうを重視するのか、その立場や考え方も人によって分かれるだろう。
環境問題では、物事が複雑に絡みあい、あちらを立てればこちらが立たずということも多い。そんなとき大切なのは、現実の客観的な把握とバランス感覚だ。現状をきちんと数量的に把握し、そのうえで、いまわたしたちができることの優先度を決めていく必要がある。さきほど触れたレジ袋とバイオマスプラスチックの話も、プラスチックごみの削減と地球温暖化防止のバランスをとった折衷案とみることもできる。プラスチックごみ問題を一過性のブームに終わらせないためにも、さまざまな困難を含め、わたしたちの立ち位置をこうしてしっかり自覚しておきたい。