文春オンライン

2020/06/11

赤字が出なければ、何をやってもいい

 一般的に評価が厳しいのは、「クールジャパン機構」との取り組みだろう。アジア版住みますプロジェクト、教育も含めた人材育成事業への進出、行政との連携……といった動きにもつながっていくところだ。

「吉本がいらんことをするな」、「クールジャパンにまで首を突っ込むな」と言う人もいる。現在、吉本を離れている私から見れば、「いらんこと」だとは思わない。民間企業のビジネスなのだから、公共性を鑑みて事業の発展を考えていくのは当然だ。その中では、うまくいくこともあれば、損をすることもある。

 100年企業として考えるなら、これからは、さらにCSR(社会的責任)なども考えていく必要が出てくるはずだ。そうなってくれば、第三者の目から見ると吉本らしからぬ事業やボランティアは、ますます増えていくとも想像される。

 時代の流れからいっても、自然なことだ。

 “人を楽しませ、笑わすエンタテインメントがあくまで本業”であることを忘れず、ブレないようにできているならいいのではないか、と思う。

「何をやってもええけど、赤字を出さんときや」といったところか。

「あの記者会見騒動があっても……」

 これから吉本はどこに行くのか、行くべきなのか──。

 私は現在、吉本の人間とはほとんど交流を持っていない。それでもやはり、時々、連絡をくれる人間はいる。そのうちの一人からは「あの記者会見騒動があっても吉本は、1ミクロンも変わってませんわ」と、またある者からは「吉本らしい働き方改革がグイグイと進んでいますよ」と聞かされた。

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「芸人は5万円までのギャラなら直営業は認めると決まった」ということも報道された。どこまでマジメな話なのかは、よくわからない。また、新型コロナウイルスにより3月2日から直営館のすべてが休館したが、これほどの試練は、100年の歴史の中でもそんなにない事だ。ただし、今回は芸人に「休演補償」があると聞き、芸人もお客さんもみなが驚いているようだ。

 結局のところ、令和元年の騒動をきっかけとして、がらりと吉本が生まれ変わることはなかったようだが、新型コロナウイルスを前にして大きく変わる必要も出てきたといえる。

 もちろん、コンプライアンスはこれまで以上に徹底していき、芸人ファースト、お客さんファースト、社員ファーストといったことを考え直すきっかけにはなったはずだ。正しく実現できれば誰もが幸せでいられ、できなければ、またどこかで悲劇が生まれる。

 経営者批判などはするつもりはないし、偉そうなことも言えない。だが、これまでの吉本は、歴史から学んでこなかったのは確かだ。1987年(昭和6十二年)のHの件があり、島田紳助の件があっても、令和元年の騒動が起きてしまったのだから。

 知らず知らずのうちに反社と関わっていたようなケースを完全になくすのは、なかなか難しい。だからといって、今後もなお同じことを繰り返していたのでは、むなしさだけしか残らない。