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プロ野球、今季の収入は6割減、赤字は10億?……元球団社長が試算してわかったこと

池田純「スポーツビジネス・ストロングスタイル」#3

2020/06/10
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 日本においてプロ野球は、これまでずっと特別な地位を確立してきました。他のスポーツを上回る人気や規模を背景に、ときには社会の公器であるとも謳ってきました。それだけファンから受けてきた思いは大きく、背負っているものも大きいのです。

 今こそ、それをファンをはじめとした社会に返すべきときです。

 夏の甲子園は中止になってしまいました。東京オリンピックは1年の延期が決まりましたが、ちゃんと開催されるのか、まだ不安な部分もあります。フジロック・フェスティバルも延期。スポーツ、エンタメ業界には依然として重苦しい空気が立ち込めています。

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 そうしたなか、プロ野球の開幕は希望の光となるはずです。

 厳しい状況に置かれた業界関係者や、試合やイベントを楽しみにしているファンに、かつてのような楽しみが戻ってきつつあるという実感を抱かせます。

 コロナ感染拡大という重いフタに光を遮られてきたエンタメ業界。そのフタを持ち上げるのは、今こそプロ野球が果たすべき役割なのです。

千葉マリンスタジアム ©文藝春秋

球団の収支を試算してみると?

 先ほども述べたように、今年の球団経営は数字的には極めて厳しいものになるでしょう。

 球団社長を経験した私が書くとどうしても生々しくなってしまうので、あくまで大まかなイメージに留める形で、今年の球団の収支を試算してみたいと思います。

 1球団の1年間の売上を、100億円と仮定します。

 もし、シーズンを通して無観客試合となった場合、チケット収入のおよそ30億円が吹き飛びます。シーズンシートも払い戻し。10億円ほどとしましょう。スポンサー収入は20億円。ここは据え置きとします。というより、据え置きであるべきだと思います。

 チームと一緒に頑張ろう、チームを支えようという気持ちが、企業が球団をスポンサードする大切な基盤です。無観客試合になったからといってスポンサードを取りやめることはその理念に反します。

 スポンサードを継続することで「苦境のチームを支えた」との印象を与え、スポンサー企業のブランド向上につながる可能性もあります。また、試合自体は実施され、放映も行われるので、一定の露出は確保できます。それらのことを考えても、すでに契約済みのスポンサー収入は維持されるべきでしょう。