収入は6割減、赤字は10億……
一方、グッズ販売や飲食といった、観客動員があってこそ売上が立つ分野の25億円はほとんどゼロになります。ネットを介して販売するなどして多少のカバーは可能ですが、大変厳しい数字となるはずです。
そして、放映権収入の15億円はステイ。となると、もともと100億円あった売上が、スポンサーと放映権プラスαの40億円程度に落ち込むことが予想されます。6割減、という試算です。
そして、30億円ほどの選手年俸総額をはじめとして、経費はおよそ50億円。こちらはさほど変わらないので、単純計算でマイナス10億。赤字となることは覚悟しておかなければならない情勢です。
それでも、1年間くらいなら、プロ野球は耐えられるはずです。
今回のコロナによる経済活動の停滞で、企業は体力勝負を迫られました。売上が急減するなか、財務体質が頑強な企業は生き残り、脆弱な企業は生き残れない。
プロ野球界は幸いにも、この10年間ほどで経営を重視する姿勢が広まり、各球団が一定の体力を確保してきました。
もし10年前、あるいは私がベイスターズの球団社長に就任した2012年頃にコロナウイルスが発生していたらと考えると恐ろしくもなります。当時のベイスターズは50億円ほどの売上に対して赤字が25億円ほどもあるという経営状態でしたから、到底もたなかったでしょう。
スポーツも経営感覚をしっかりと持っておくことがいかに重要なことなのかを、今回のコロナは図らずも再認識させてくれたと言えます。
ともかく、今のプロ野球界なら球団単体の経営でも多少の体力勝負には耐えられるはず。
これは、JリーグやBリーグなど他のプロスポーツにはない強みです。仮に野球と同じように単年10億円の赤字を出したとして、それに耐えられるかどうかというと、かなり厳しいでしょう。とりわけ、数字の上では黒字でも、売上の多くを親会社からのミルクマネーに頼っているクラブほど、シーズン中止や試合の無観客化によるネガティブな影響は大きくなってくる。それこそ、さらに親会社に頼る以外に道がなくなってきている現状も、サッカーなどには色濃くあるでしょう。
こうした面においても、シュリンク(縮小)を余儀なくされるスポーツ界において、苦しくとも前に進んでいく姿を見せられる貴重な存在が、プロ野球なのだろうと思います。