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「寒かった。お腹が空いて、寒かった」

「ステイホーム週間」が終わると銀座の大通りには少しずつ人が出はじめていた。リーマンショックのずっと以前から、銀座中央通りのルイ・ヴィトンの脇道に座り続けている一人の男性がいる。

「4月、5月は大丈夫だった?」と聞くと「寒かった。寒かったよ」と彼は話した。「お腹は? 食べられた?」と重ねて聞くと、「寒かった。お腹が空いて、寒かった」との返事。もう季節やカレンダーは忘れてしまっているようだった。

 欧米には、空き缶を置いて街角に座り、スーパーの前などで紙コップを持って立つ貧困者にコインを落として救済する習慣がある。コロナ禍で欧米からの観光客も一気に消えたことで、彼の収入もまた消えてしまったのだろう。

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「ステイホーム週間」が始まった2日目の銀座4丁目交差点

炊き出しに参加した男性は

 宣言が解除された6月のはじめ、銀座の近くで開催された炊き出しには60名程度が集まっていた。参加した50歳代の男性に声をかけてみた。

「ここには毎回来ているし、他にも行くこともある。生活保護で(交通機関の)パス券をもらっているから、みんなあちこち行っている。今は生活保護の申請を支援の人がやってくれてアパートも探してくれるから、月末に申請すれば月の初めには部屋に入れた。こうやってお土産もくれるから凄く助かっている」

炊き出しには約60人が参加。6月はじめ、東京・東銀座駅近くの祝橋公園で、地の果て宣教教会が主催

 炊き出しに週に数回行くことで生活はなんとか賄うことができ、外出自粛の期間も大丈夫だったという。新型コロナウイルスのことはどうやって知ったのか? と聞くと、マスクを取り出しながら、こう答えてくれた。

「支援の人が紙に書かれた注意書きを配ってくれる。マスクは人にうつさないためで、どうしたって自分にはうつっちゃうんだろ」