新型コロナウイルスの感染拡大は、あらゆる立場の人々に影響を与えている。それは銀座の路上で暮らすホームレスも例外ではないだろう。これまでの居場所から、消えたり移動したりしているのだ。コロナ禍によって多くの飲食店が休業を余儀なくされ、日雇いの仕事も減少するなど社会環境は激変。銀座という特殊な街に生きるホームレスの現在をレポートする。(取材・文=薄井崇友・フォトジャーナリスト)
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華やかな銀座の路上で暮らす人たち
90年代から仕事で銀座・新橋界隈に行くことが多かった筆者は、必然的に銀座の街並みとともに彼らの姿を目にしてきた。以前の日比谷公園や隅田川沿いには青いビニールシートの小屋が並び、銀座の街中でも、帽子や空き缶を置いて座ったまま眠っているような彼らの姿があった。華やかな表通りから少し外れた裏路地など、意外なロケーションに彼らは暮らしていた。
声をかけ、言葉を交わした数週間後にまた見かけると今度は向こうから小さく手を振ってくれることもあった。彼らの多くは想像とは裏腹に、優しく気弱でシャイな人が多かった。事情があってホームレス生活をしているのだろうし、その頃は人生の自由、多様性くらいにしか思っていなかった。
ホームレスの数は減少しているといわれている。リーマンショックの2008年末、日比谷公園に「年越し派遣村」がつくられ、雇い止めされた非正規労働者やホームレスを保護したことはよく知られているが、その後も民間支援団体などが熱心にサポートを継続し、2011年の東日本大震災の頃からは徐々に減少。東京オリンピックの決定で行政も動き、近年はさらに数が減っていたはずだ。昨年夏に行われた東京都の実地調査では、都心8区(新宿・渋谷・豊島・文京・台東・墨田・千代田・中央)のホームレス数は合計で378名。ただし、これは日中の調査数値で、同時期に民間の市民団体「ARCH(アーチ)」が都内の深夜の街を歩いて調べた数は1040名だった。
支援は炊き出しだけではなく衣服の配布や生活保護の申請から住居提供にも及ぶ。生活保護を受け、住居での生活を選んでいく人がいる一方で、何らかの理由があって申請ができず、野宿生活を続けている人もいる。以前とは異なり、現在の彼らの服装は、一目では分からない普通の身なりをしていることも多いのだが、だからと言ってこの問題が消えたわけではない。