コロナ禍は、生活や経済に大きな影響を与えている。なかでも、中途採用をはじめとした雇用情勢が気になっている人もいるだろう。総務省が発表した「労働力調査」によると今年4月の完全失業者189万人のうち、30万人が勤め先や事業の都合による離職を余儀なくされたという。景気動向と関わりが深い転職市場の現状に迫る。
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5月頃から選考プロセスに変化が
外資系コンサルティングファームに勤務している松田直樹さん(仮名・30代)は、3月頃から転職活動をはじめたという。
「当初は、こんなに大事になるとは思っていませんでしたね。さすがに緊急事態宣言が出されたあたりで、転職活動は一旦停止しました。5月頃からは転職エージェントと求人サイトを使って活動を再開しています。エージェントからの提案数は変わりないですが、求人サイトの求人数は減っている印象ですね」(松田さん)
「4月中には次の職場を決めるつもりだったが、予想外に延びてしまった」という松田さん。再び転職活動をスタートすると、選考のプロセスが大きく変わっていたという。
「特にオンライン面接の機会が増えましたね。現在は在宅勤務なので、仕事の合間に面接を受けられるようになりました。何社か受けましたが『今、役員の手が空いているので面接しましょう!』と、フットワークが軽い会社もあれば『役員面接は対面で行うので、決まり次第ご連絡します』という会社もあって、同じ業界でも個性が出やすくなっていますね……。後者の会社は融通が利かないような印象を受けました」
オンラインでの対応力は、会社選びの新基準になりそうだ。
「私の場合は次の転職先を見つけるまで、あと3カ月くらいはかかりそうです。現在は元の職場に籍を置いていますが、もしも先に仕事を辞めていたら、と思うとゾッとします」
業界によって転職市場に大きな差
人材紹介サービスを行うエン エージェントのマネージャーを務める藤村諭史氏は、現在の転職市場について「中途採用の求人数が3割ほど減っている」と話す。
「コロナ禍は、業界によって転職市場に大きな差が生まれているのが特徴です。飲食や宿泊などのサービス業界、旅行・観光、エンタメ業界、海外に工場があるメーカーも求人の数が減っていますね。一方で、テレワークの普及などで需要が高まっている情報通信業の求人には、大きな影響は出ていないようです」
企業の業績悪化は、採用活動に反映されやすい。やはり、苦境に立たされている業界の企業では採用そのものを見送るケースが多いという。
「現在の求人数減少には、いくつかのパターンがあります。予定されていた採用計画を見直して、採用活動そのものをやめる企業や、一旦様子見でストップしているものの、後に再開するパターン。継続して採用を行っている企業でも、書類選考を通過して面接にたどり着く確率が落ちているので、厳選採用の傾向が強まっていますね」