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 番組内のドラマは、劇団「自転車キンクリート」の劇作家・演出家だった飯島早苗と鈴木裕美などが脚本を担当し、当時の若手俳優が多数出演した。1990年2月に始まった「十二単衣に着がえたら」では真木蔵人が登場し、さらにベテラン俳優でこれがバラエティ初出演となった高橋英樹などが脇を固めた。続く10月からの「タイムパトロール牛若丸子」では、江口洋介がレギュラーに加わった。これらはコメディタッチのドラマだが、他方で、笑い抜きのショートラブストーリー「贈り物シリーズ」には毎回、東山紀之、高嶋政宏、高嶋政伸、織田裕二、吉田栄作、阿部寛といった俳優がゲスト出演し、山田の相手役を務めている。当時流行っていたトレンディドラマを思わせるキャスティングだ。江口洋介もこのあと、『東京ラブストーリー』『101回目のプロポーズ』などに出演し、トレンディ俳優の代表と目されるようになった。

江口洋介も『やまだかつてないテレビ』番組中期に準レギュラーとして出演していた

「裸や暴力なんていう時代ではないと思います」

『やまかつTV』のレギュラーはこのほかにも、俳優の渡辺徹、お笑いの関根勤、所ジョージ、アイドルだった高岡早紀、西田ひかる、ミュージシャンの大江千里、振付師のラッキィ池田、ロサンゼルス五輪・体操の金メダリストである森末慎二、バレーボールからビーチバレーへと転向したばかりだった川合俊一などバラエティに富んでいた。出演者たちのファミリー的な雰囲気も人気の一因となったのだろう、視聴率は最高で20.4%を記録する。だが、他方で当時のテレビ誌では、小学生にウケるようなちょっとHだったり、暴力的な要素がないところに不安もあると評された。これに対しプロデューサーの小畑は、《裸や暴力なんていう時代ではないと思います。それがない時代は新鮮だったけれど、今の人はそんなモノ欲しがってないと思いますヨ》とまるで意に介さなかった(※5)。このあたり、最近よく言われる「誰も傷つけない笑い」を先取りしていたようにも思える。

1992年2月所得税の確定申告をする山田邦子。後ろは視察に訪れた羽田孜蔵相(当時)

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『やまかつTV』において山田は自らアイデアを出し、絵コンテまで描いて、収録は深夜どころか朝まで続くこともしばしばだったが、けっして弱音は吐かなかったという。《毎週皆で何か面白いことをやろうよ、見たことのないものをやろうよって、アイデアを出し合って。歌って踊って、ネタやコントをやって。泣いたり笑ったり。思い出すと本当に楽しかったなあ》とは、番組終了から17年後の2009年、DVDがリリースされた際の彼女のコメントだ(※6)。