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「夢は走ることやね」中学3年で骨肉腫を発症し、左足を切断した少女の物語

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source : 提携メディア

genre : ニュース

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皆に祝われ、笑顔でケーキのろうそくを消した夢華さんに、18歳の夢を聞いた。

「夢は走ることやね。今は、鬼ごっことか普通にできれば。
お金貯めておいしいものを食べて、いろんなとこ行きたいです。楽しいことをしたい。自分がしたいことをしたい」

15歳の頃、「まずは高校受験に合格すること。早く退院すること。楽しく生きます。あ、卒業式も!」と話していた彼女は、大人になってきていた。

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2019年3月、高校卒業式の朝。
いつもと同じように車に乗り込む夢華さんだが、父親の俊之さんにとっては、娘を学校に送る最後の日だ。静かな時間が車内に流れる。

中学の卒業式では、抗癌剤治療中の感染症を避けるため、別の場所から壇上へ上がったが、今回はクラスメイトと同じ会場から壇上へと向かう。家族と目があった夢華さんは照れ笑いのような笑みを見せていた。

 

卒業式の記念に、両親へ宛てたメッセージには、感謝の言葉が綴られていた。

「送り迎えや弁当を作ってくれてありがとう。やりたいことをやりなさいと背中を押してくれて感謝しています。自分の夢を叶えられるよう努力していきます。これからもたくさん迷惑をかけるかもしれないけど、よろしくお願いします」


しかし卒業式から2週間後、夢華さんは、足に痛みを感じていた。
別の場所に、がんが見つかってしまったのだ。
繰り返し訪れる病。

「外科の先生たちは前向きやけん、そこに私たちも救われている。あとはまあ、夢華がね、高校を出てしたいことをするのが一番かなと思う」と母親の南美江さん。

「本人はそのもう、『治療とかせんで好きなことをしたい』と言ってきた。『それはダメよ』と言って…。『私もきちっと決めてるけん』言ってたけど。
今まで夢華の頑張った姿にみんなの勇気をもらって頑張ってきたけど。次はもう、家族の力で夢華を引っ張って行くしかない。何とか…何とかなるよ。俺も絶対治るって思うとるけん」と父親の俊之さんも話す。

始めは弱気になっていた夢華さんだが、今は前向きに治療に励んでいると、両親が取材班に教えてくれた。

 

幾度も襲ってくる試練。
それでも前向きに進んでいく夢華さん。
家族、友達。周りの支えが後押ししている。

 

※この記事は、テレビ長崎で2019年5月に放送されたドキュメンタリーを記事の形に再編集したものです。
松尾夢華さんは2020年1月11日に亡くなられました。夢華さんのご冥福を心からお祈り申し上げます。

「夢は走ることやね」中学3年で骨肉腫を発症し、左足を切断した少女の物語

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