“テイクアウト不倫”を本誌にすっぱ抜かれたグルメ芸人が、“つまみ食い不倫”だの“女まで食べ歩き”だのとさんざん揶揄されたように、男性が女性とセックスすることは、しばしば“食う”とか“食べる”とか形容される。しかし、もし(一部のカマキリのように)性交後、女性が男性を文字通り食べてしまう世の中になったとしたら?
この強烈な仮定から出発する「ピュア」など全5編を収める短編集が本書。表題作は、SFマガジン掲載後、早川書房のサイトで全文が無料公開されると、評判が評判を呼んで盛大にバズり、同社史上1位となる20万超のPVを記録した。
小説の背景は、環境破壊によって地球人口が今の4分の1にまで激減した未来。国家連合が遺伝子改良を推し進めた結果、女性は、鱗と牙と鉤爪を持つ、平均身長2メートルの強靱な肉体を獲得。人口の9割を占める男性がひ弱な体のまま地上に残る一方、女性は人工衛星で暮らし、妊娠出産を義務づけられている。だが、妊娠するには性交後に男を“食べる”ことが不可欠。この状況下で、果たして恋愛は可能なのか?
著者は、「現代女性の生きづらさを描いたらSFになった。」と題するネット上のインタビュー(こちらも話題になった)で、「ピュア」がモチーフを借りたという『人魚姫』について、“ダメ男が考える都合のいい女の話”とアンデルセンを一刀両断。女は本当は自分たちで思ってるよりずっと強い存在だという持論を小説にしたと語っている。