セックス依存者の快楽は「脳がハイジャックされた状態」
セックス依存症者は、セックスを通して支配欲求や征服感、男性性の確認、女性を所有しているという優越感など様々な側面があるといえます。このときの快楽は、単なる性的な快感だけでない。条件反射のスイッチが作動して、その衝動を途中で切り上げられないような「脳が乗っ取られた状態」になってしまうんです。
そうなると「ダメだとわかっていてもやめられない」「相手がどう思うか想像ができない」「適切なリスクコントロールができない」など、コントロール障害をきたし意志の力では制御できなくなってしまいます。
このいわゆる「脳がハイジャックされた状態」 という言葉は依存症の説明や耽溺している状態の場面でよく使われるのですが、それをジャッジするには「優先順位の逆転現象」が起きているかどうかが重要です。
渡部さんは、不倫関係にある女性が複数いて、なかには週2回も関係を持っていた女性もいたと報じられています。ここからは佐々木さんとの夫婦生活を維持しながら、相当マメに女性と連絡をとっていたことが推測できます。さらに佐々木さんに隠れて連絡を取り合う必要があったでしょうから、渡部さんにとって性行動が生活の中心になっていた可能性もかなり高いでしょう。
「セックス依存症」の境目は?
もちろん渡部さんも、奥さんや子どもと過ごしているときには、その時間が最優先になっているはずです。しかし、どんな綺麗な奥さんがいようと、可愛い子どもがいようと、1回のセックスが最優先になるのが依存症の特徴です。多目的トイレでの性行為は、優先順位の逆転現象というよりは認知の歪みからくる男尊女卑的価値観の表れであると感じます。
セックス依存症の人が感じる性衝動は、その行動を終えるまではその強迫性に支配されており制御することができません。繰り返し訪れる性衝動や強迫性を「減らさなければ」「このままではバレてしまう」といった恐怖感を持っていても、1回のセックスができる状況を目の前にした際にはその衝動が勝ってしまう。そしてこの問題行動を反復することで、強迫的性行動が生活の中心になり、仕事や家庭内での責任が徐々におろそかになっていってしまう。そこまでくると、セックス依存症予備軍とされる状態です。
逆説的に言うと、たいへん旺盛な性欲を持っている男性でも、相手女性への気遣いがあり、TPOに応じて行動化できており、明るく楽しく親密なセックスライフを満喫できているなら、それはセックス依存症ではないのです。重要なのは、回数や経験人数ではありません。