6月19日、政府は自粛を要請していた都道府県をまたぐ移動を解禁した。コロナ禍が依然、継続はしているものの、日本国民はコロナとつきあいながら、新しい生活様式を歩むこととなった。
こうした動きを受けて、社員に課していたテレワークをやめ、通常の勤務形態に戻した企業もあるが、今後もテレワークを継続すると表明する会社が後を絶たない。日立製作所は社員の7割に対して週2日から3日、在宅勤務にすることを発表した。NTTでは社員の5割を在宅勤務に、日清食品では出勤する社員数は上限を25%とすることを決定した。
こうした措置はテレワークによる業務に支障がないことを認識し、その働き方をむしろポジティブにとらえて、経営に取り入れていこうという動きだ。
「大手町まで40分」の家選びは終わる
テレワークが中心の働き方は新しい生活様式の根幹になっているが、これは日本の社会構造に大きな変革をもたらすことになりそうだ。日本の就業者は2019年現在で6724万人を数えるが、そのうち6004万人、つまり約9割が会社員である。その大多数がこれまで当たり前に思い、毎朝毎夕おこなってきた「通勤」というライフスタイルが変わるのだ。通勤のウェイトが下がれば、家の選び方も変わる。
90年代半ば以降、夫婦共働きが当たり前になると、子供を保育所に預けて夫婦で都心に通勤するというスタイルが、家選びの基準を作ってきた。会社がある大手町まで直通40分、最寄りの駅までは徒歩5分以内のマンションが家選びの基準と言われた。
都心部のマンションは価格も高く、夫婦と子供が住むファミリータイプのものでは、新築で7000万円から1億円を超える水準になった。以前と異なるのは夫婦共働きであるがゆえに、ローンの調達力が格段に向上したことだ。おまけに低金利政策が長く続き、税制面でも満艦飾の補助が加えられてきた結果、30年から35年もの長期ローンを夫婦そろって組み、都心部のマンションを買うというのが一般的なライフスタイルになったのだ。
駅までの距離もさほど重要ではなくなる
ところが大手町の会社まで出かけるのは週1回、あるいは月に2、3回などということになると、これまでの家選びの基準は一変する。大手町に近くても、「旧工場地帯にあって、周囲に利便施設が乏しい」「環境がある程度整っているのはマンションの敷地内だけで、一歩外に出ると倉庫やコンテナばかり」というところもある。これからは、こうした立地の物件を多額のローンを組んで買うという選択肢はなくなってくる。一日を過ごすには生活環境として疑問符が付くからだ。
駅まで5分以内という基準も、さして重要な選択基準とはならなくなる。駅はたまに行く場所なのだから、非常に遠いのは困るが、徒歩で行ける範囲、あるいはバスや自家用車でのアクセスさえ確保できていれば、それで十分ということになる。