脱北者団体が金正恩委員長を批判するビラをまいたことをきっかけに、南北共同連絡事務所を爆破するなど韓国への強硬姿勢を強めてきた北朝鮮は、6月24日突然韓国への軍事計画を保留した。前回は、長年北朝鮮の情報機関に所属し金正日総書記の指示を受けて作戦計画を立案した経験もある高位脱北者の男性に「保留」の背景を分析してもらったが、今回は北朝鮮の次の一手について聞いた。

10月10日に向けSLBM、短・中距離ミサイル発射か

ーー北朝鮮の次の一手は何だと考えられますか?

時間軸として、今年の残りの期間に北朝鮮が何をしてくるのかについて考えてみます。まず北朝鮮は、10月10日の朝鮮労働党創建75周年を、最大の政治的行事として進めることに全てを集中するでしょう。したがって、情勢を緊張させて不安を醸成することよりも、安定的に状況を管理することが優先されます。朝鮮労働党創建日を契機に、金正恩委員長の政治・軍事的業績を最大化して、金委員長を中心にした朝鮮労働党の統一・団結をより一層強固にすることに全力を尽くすでしょう。

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この目標を達成するために、必ずしなければならないことがあります。それは核武力の強化と発展に基づく核抑止力の強化です。近く行われる朝鮮労働党軍事委員会第7期第5回会議(注1)で明らかにされるでしょう。言い換えれば「非核化」の意味を薄め、「核抑止力」を高めるための、先端武器開発を強調する可能性があります。頻繁に報道されているSLBM=潜水艦発射弾道ミサイルの発射実験を実施したり、党創建日に行われるとみられる軍事パレードに、SLBMを登場させる形を取るでしょう。

2019年10月2日に発射された北朝鮮のSLBM
2018年9月9日“建国70年”での軍事パレードを報じる労働新聞

ただ、アメリカが特に北朝鮮を刺激しない限り、トランプ大統領が再選されるまでは、アメリカの気分を害するような軍事的行為を北朝鮮は行わないと考えられます。

南北関係については、北朝鮮はすでに一方的に勝利したと自負しているので、大きな変化はないでしょう。しかし金剛山観光施設廃棄(注2)、開城工業団地施設の撤去といった選択肢は、まだ存在すると見なければなりません。これらを実行するのかはアメリカの行動次第であり、その水位(※北朝鮮の行動の度合い)が調節される事になります。