一方でアメリカに威嚇だと受け止められないギリギリの範囲内で、新型ロケット砲や短・中距離ミサイルなどの発射実験を、党創建日が近づくにつれ実行してくると予想されます。不確定要素は、アメリカとの関係における戦略的解釈に起因することになります。米朝関係について、北朝鮮がどんな戦略を選ぶのかによって、現代化され改良されたSLBMや他の新型のミサイルの発射に踏み切る可能性も無視することは出来ません。
北朝鮮は「核大国」として強硬モードに突入
ーー今後の北朝鮮を考える上でポイントになるのはどこでしょうか?
北朝鮮は2019年の年末に行われた党中央委員会全員会議(注3)で自力更正に基づいた正面突破戦を宣言しました。これは逆に考えると、非核化ではない「核抑止力の強化」に全てのものを集中するという、新しい戦略を提示したものです。言い換えれば、今まで数十年もの歳月をかけてアメリカと国連の制裁を克服して核武力を完成させたので、これからは完成された核武力を、いかなる制裁や圧力からも最後まで守り通し、さらに現代的に発展させなければならないという強い意志が込められています。
つまり金委員長が話したように、今後の北朝鮮のすべての活動、すなわち対韓国、対外活動の原則は、核武力を中心にした大国としての強硬モードで進められるとみられます。これは、政治、軍事、経済領域全てに及びます。今回韓国に対して強い圧力をかけたのも、その戦略の一つの形と言えます。
よって米朝関係も核保有国同士の力の均衡という形になり、解決が非常に難しくなると見なければなりません。
注1)6月24日に対韓軍事計画の保留を決めたのが第7期第5回会議の予備会議であり、本番の会議が近日中に行われるとみられる
注2):韓国と共同で開発した観光施設。2019年10月に金委員長が視察し「見るだけでも気分が悪くなるみすぼらしい南側の施設を、南側と合意してすべて撤収し、現代的な施設を新たに建設すべきだ」と発言している
注3)2019年12月28~31日に行われた全員会議で金正恩委員長は「正面突破」という言葉を10回以上使い「制裁圧迫を無力化させ、社会主義建設の新たな活路を切り開くための正面突破戦を強行すべきだ」「国家安全のため必須の戦略兵器開発を進めていく」と発言している