ゾンビ学から見る『鬼滅の刃』
さて、さまざまな方面に波及している『鬼滅の刃』だが、その人気の理由はなんだろうか。ここからは、ゾンビ・コンテンツを分析して明らかになったことを応用し、『鬼滅の刃』の分析を行ってみたい。まだ原作漫画を読まれていない方、アニメを見られていない方のために、話が進むにしたがって明らかになる事実を明かしてしまうこと、いわゆる「ネタバレ」は極力避け、基本的な設定や毎回の定番のストーリーの流れを対象に論じていきたい。
物語の構成要素を整理する
『鬼滅の刃』の舞台は大正時代。主人公の竈門炭次郎(かまど たんじろう)は一家の長男として、炭売りをしながら暮らしていた。父親はすでに亡くなっているが、母親と五人の弟妹がいる。一人で町に炭売りに出かけた炭次郎が山中の自宅に戻ると、人を食う「鬼」によって、家族が殺されてしまっていた。炭次郎は、家族の中で、一人だけ体にぬくもりが残っていた妹の禰豆子(ねずこ)を背負い、助けを求めて雪の中を走る。その最中に禰豆子は意識を取り戻すが、禰豆子は鬼に変化してしまっており、炭次郎に襲い掛かってくる……。
ここまでで、本作に登場する人間と対峙する存在は「鬼」であることがわかる。「鬼」について、作中では以下のように解説される。「鬼」「主食・人間」「人間を殺して喰たべる」「いつどこから現れたのかは不明」「身体能力が高く傷などもたちどころに治る」「斬り落とされた肉も?がり手足を新たに生やすことも可能」「体の形を変えたり異能を持つ鬼もいる」「太陽の光か特別な刀で頸くびを切り落とさない限り殺せない」。そして、本作にも、この「鬼」と対峙する組織が描かれる。「鬼殺隊」だ。「鬼殺隊」「その数およそ数百名」「政府から正式に認められていない組織」「だが古いにしえより存在していて今日も鬼を狩る」「しかし鬼殺隊を誰が率いているのかは 謎に包まれていた」。主人公は、この鬼殺隊に入ることになる。