被験者は「猫舌群」5名と「非猫舌群」5名の計10名。MRIで撮影する時は横たわる必要があるので、機械の中で熱いお茶を飲むわけにはいかない。そこで、被験者は撮影の直前に各自3回以上、熱いお茶を飲み、その時の舌の動きを記憶したうえで撮影に臨んだ。MRIの中で、お茶を飲んだ時の舌の動きを再現してもらったのだ。
「猫舌群と非猫舌群とでは“舌の動き”がまったく異なり、しかもそれぞれが非常に特徴的な動きをしていることがわかったのです」(高原医師、以下同)
下の画像の左側が“猫舌群”、右が“非猫舌群”だ。
猫舌ではない人の場合、お茶が口に入ると舌が後方に移動して、下の歯と舌の間に“ポケット”を作り、そこにお茶を溜めている。そのあとで舌の周囲を伝ってのどへと流し込んでいくのだ。
一方の猫舌の人は、まず最初に舌先をお茶に接することからスタートする。非猫舌群の人が終始舌先をお茶に接しないようにしているのとは正反対の動きだ。
猫舌とそうでない人の決定的な違い
「舌の中で最も熱さに弱いのが舌先。その敏感な舌先を最初に接触させれば、猫舌じゃなくても熱く感じます。私は猫舌ではないけれど、ためしに舌先から接してみたら熱くてびっくりしました」
どうやら、“ポケット”は比較的熱さに強く、ここで温度を一定程度下げると同時に、口腔内の各組織を熱さに馴染ませることで、自然に飲み込めるようにする仕組みのようだ。
高原医師によると、お茶が口に入る前の舌の位置を基準点とした時、お茶が口に入ってきた時の舌は、非猫舌群は後方へ、猫舌群の人は前方へと動いているという。これが猫舌とそうでない人の決定的な違いだったのだ。
熱いものが口に入ってきた時に舌を後方に引いて、舌の下のポケットに入れるという一連の動きが、人間が本来持っている反応であるならば、「猫舌=機能不全」、つまり「疾患」ということになる。