1ページ目から読む
3/3ページ目

 ですが、ちょっと待ってください。日本において、いじめの定義は大きく3回変わっています。今の親たちが中学生だった頃、1985年の定義には「自分より弱い者に対して一方的に」「身体的・心理的な攻撃を継続的に加え」「相手が深刻な苦痛を感じて」、かつ、学校が「事実を確認しているもの」と条件がついていました。94年に「学校の確認」が削除され、2007年には被害者が主語になり、いじめられた子どもが「心理的、物理的な攻撃」により「精神的な苦痛を感じているもの」となりました。つまり、いじめられた本人が「これはいじめだ」と感じたら、いじめなんです。

 確かに、先生や学校や教育委員会なんかを相手にして抗議したり、闘ったりすれば、狭い地域社会ではいろいろなことを言われるでしょうし、モンスター・ペアレントだとレッテルを貼られてしまいかねません。

 でも、モンスター・ペアレントでいいじゃないですか。いじめというのは、明確な犯罪行為です。暴力、暴行、暴言などは、一般社会で行えばすべて犯罪です。程度の軽重というものはなく、すべて子どもの命にかかわる問題なのです。親たちが勇気をもって声を挙げなければ、いじめ自殺はなくなりはしないでしょう。

ADVERTISEMENT

 もうすぐ夏休みが終わります。この時期はまた学校に行かなくてはならないと絶望した子どもが、自ら死を選んでしまうことがあります。そんな悲しい夏が繰り返されるのを、私たちはいつまで放置し続けるのでしょうか。

※2017年2月に法政大学で行なわれた最終講義の全文は『尾木のママで 言わせていただくワ』に特別付録として収められています。

尾木のママで 言わせていただくワ

尾木 直樹(著)

文藝春秋
2017年8月24日 発売

購入する