Twitterで何気なくつぶやいた就職氷河期世代である自分のホームレス体験談と、その後の意外な復活劇が多くの反響を呼んだらしく、こうやって寄稿させていただく機会を得ることになった。

 あくまでも一個人の体験談ではあるのだけれど、それでも誰かの役に立てばと、一部、細部を伏せながら書いてみようと思う。

「一生このままなのだろうか」住まいを失った、2006年夏

 何もすることがない――というより、何もすることができないというのが正しい。アパートを借りようとすると、現在の住所や保証人のない私には貸すことができないと言われ、アパートがないため住民票を移すことができず、それを理由に神奈川県の役所は私の話を聞いてくれることはなかった。

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 そうやって一日、一日と、何もできないまま過ごしていくうちに私の衣服は薄汚れ、風呂に入れないままの髪や顔は脂でべっとりとし、そして何より酷い臭いがするようになっていく。

写真はイメージ ©︎iStock.com

 2006年の夏、私はホームレスになっていた。

 昼間は夏の暑さをしのぐために身動き一つせずに日陰で過ごし、夜になると連れだって歩くカップルや家路を急ぐサラリーマン、酔っぱらって絡んでくる若者たちから身を隠すようになるべく人影のない場所へと移動する。

「一生このままなのだろうか」

写真はイメージ ©︎iStock.com

 夜がくると決まって、これまでには味わったことのない先が見えないという恐怖がじわじわと身体中に広がり、歯と歯茎の間が浮くような感覚がしてズキズキと痛む。これはろくに食べ物を口にしていないことと、もう一つ、歯磨きをすることができなかったためで、この時の生活がたたり、現在、右側の下のほとんどの歯は人工のものに入れ替わっている。