『武器としての「資本論」』(白井聡 著)東洋経済新報社

 マルクスの『資本論』から「商品化」「包摂」など重要概念を取り出し、現代社会を生き延びる知恵として、丁寧に解説した本だ。著者は『永続敗戦論 戦後日本の核心』などで知られる、気鋭の思想史家。

「小泉政権から現在に至るまで、多くの人々が自分に不利な結果をもたらす政策を支持することが不思議でした。そうした世の中の不条理を構造的に読み解く本を書いていただきたくて、著者にご相談したところ、『資本論』から現代社会の問題を考えるというアプローチの企画が生まれたんです」(担当編集者の渡辺智顕さん)

 たとえばマルクスは、労働時間を制限する工場法ができた真の目的は人道的配慮ではなく、あくまで労働者という搾取対象の再生産の維持だと分析する。著者は現代の「働き方改革」に、同様の構図を見て取る。

ADVERTISEMENT

 主な読者に想定したのは現役世代のビジネスパーソン、とりわけ、大きな犠牲を強いられている若者たち。困難から抜け出そうと自己啓発書にすがりがちな彼らに届くよう、小見出しを多く入れ、本文の重要箇所は太字に。新自由主義に否を突きつける逆自己啓発的な内容を、自己啓発書的なリーダビリティの高い紙面に盛り込んだ。

「新型コロナの厳しい状況下で刊行されたにも関わらず、発売直後から順調な売れ行きでした。まさに今、読むべき内容だったからではないでしょうか」(渡辺さん)

2020年4月発売。初版8000部。現在7刷7万部

武器としての「資本論」

白井 聡

東洋経済新報社

2020年4月10日 発売