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 そして6月30日、「国家安全法」は、全人代常務委員会において全会一致で可決され、香港政府が即日施行するに至りました。

 この「国家安全法」が導入されると、香港の言論の自由や政治活動は大きく制限される。たとえば、香港の自治を主張すれば「国家分裂」を画策したことになり、共産党の独裁体制に異を唱えれば「政権転覆」を図ったことになる。デモによって抗議をすれば「テロ活動」を行ったとみなされ、外国のメディアや政府機関と関われば、外国との結託・通謀、場合によると「国家反逆罪」になる可能性が出てきます。

 さらに、「香港の他の法律と矛盾する場合、(北京が制定する)国家安全法を優先する」という“ダメ押し”までされています。これまで香港が享受してきた自由や人権、民主主義の原理が全否定されかねないのです。

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5月28日、北京の全人代で、国家安全法に賛成票を投じる習近平国家主席(左)と李克強首相 ©︎AFLO

 中国は、香港の旧宗主国であるイギリスとの間で、1997年に香港が返還されたあとも、50年間にわたって「一国二制度」という形で言論の自由を始めとする香港の自治権を保障し、自由な諸権利、人権、民主主義の原則を守ると約束(英中共同声明)し、返還を実現したのです。そしてこの約束は国際法と見なされています。ところが、50年という約束された期間の半分も経たないうちに、中国の都合で破られようとしているわけです。

旧宗主国のプライドを引き裂かれたイギリス

 コロナ以降の中国の姿に、いまや世界の主要国はじめ多くの国々では「チャイナ・アウェアネス(対中警戒心)」とでも呼ぶべき意識が急速に高まっています。

 いま国際社会の中でも、とくに中国への態度を急変させているのがヨーロッパ、その中でもとりわけイギリスです。

 アメリカ同様、新型コロナウイルスで大きな被害を受けているイギリスですから、中国による情報隠蔽がウイルス拡散の原因だったとする批判は根強く存在しています。そこに香港問題が加わったわけで、これはイギリスからして見れば、旧宗主国として「香港に自由と民主主義を根付かせたのは我々だ」という自負がある。それが世界注視の中で真正面から破られたのですから、国としてもメンツ丸つぶれです。

 実際、この数カ月でイギリス政府、そして国民の中国に対する姿勢は激変しました。たとえば、イギリス政府はこれまで、中国ファーウェイ製の5G用製品を35%まで受け入れるという方針を示していました。それゆえ、ファーウェイ批判の急先鋒、アメリカのトランプ大統領は再三にわたって、「全面禁止」にするようジョンソン首相に迫っていましたが、イギリスはこれまでそのアメリカの圧力を跳ね返して中国に寄り添っていたわけです。

 ところが、いまでは保守党を中心に政権全体で「ファーウェイ製品をイギリスから全面排除する」という強烈なコンセンサスが持ち上がっています。これまでは「アメリカの言いなりになるな」と主張していた人たちも言動を一転させ、一気に中国を批判し始めました。