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【香港蹂躙で馬脚を露わした中国】2020年に米英仏独が「包囲網」を築いた歴史的意味

アフター・コロナの中国論 #1

2020/07/04
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 永世中立国という特殊な政治的立場でもあり、金融大国でもあるスイスは、世界中に人的ネットワークをもっています。様々な情報が入ってくるため、世界情勢について常に一歩先を行く“国際秩序の風見鶏”になる国です。その国が次第に離れていく現状は、「来るべきときが来た」といえるのかもしれません。

 こうした世界の情報、金融、人脈のキーとなる場所は、地球上にスイス以外にも数カ所だけあります。そのひとつが、実は「香港」なのです。

いまも情報、金融、そして人のネットワークの中心にある香港 ©︎iStock.com

 中国が近年、いかに世界第2位のGDPを誇る経済大国になったとはいえ、その人口や市場の規模あるいはその発展段階から言えば、まだまだ世界中から資本を集め、中国国内への投資を誘導していかなければならない。

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 その中でも、香港は中国国内にあって、最も外国から様々な「成長資源」が獲得できる場所でした。たしかに今や、深圳の方が香港にくらべてGDPを稼いでいるし、金融センターとしての機能だけでいえば一部では上海が主流になっていますが、情報、金融、そして東南アジアの華僑人脈などの世界的な人的ネットワークなど有形無形の「資源」を抱える香港は、いまなお中国経済にとって非常に重要な都市であり続けています。

 しかし今回、北京政府はその香港という、“金の卵を産むニワトリ”を絞め殺したのです。そして、その“絞め殺した姿”を目の当たりにした国際社会が、急速に中国から手を引き始めている。「やはり中国とは価値観が違うんだ」と目を醒ましたのです。

いまなお中国経済にとって重要な都市である香港 ©iStock.com

尖閣には連日中国船が…

 当然ながら日本も他人事ではありません。たとえば、領土問題で中国は日本に圧力も強めています。

 尖閣諸島周辺では、中国当局の船が連日確認され、過去最長となっています。コロナ禍の4月14日から80日連続(7月2日現在)という異常さです。中には機関砲のようなものを搭載した船もあったといいます。6月18日には、日本の領海近くまで潜航して入り込んだ中国海軍の潜水艦の動きが捉えられています。このドサクサの中、中国のこうした傍若無人な振る舞いを見るにつけ、日本人も連日「価値観の違い」を思い知らされているのです。

 なぜ中国は暴走を繰り返すのか。そして日本としてどう付き合うべきなのか。後編の「#2」では、彼らの行動原理、いわばその「本性」を解き明かしていきたいと思います。

【香港蹂躙で馬脚を露わした中国】2020年に米英仏独が「包囲網」を築いた歴史的意味

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