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 イギリス外務省は「英中関係はコロナ後も決して元には戻らないだろう」と語り、イギリスのラーブ外相も「中国はついにルビコン川を渡って香港の自由を侵害し始めている」と強い反発を隠そうとしません。加えてジョンソン首相は、1997年の返還以前から住んでいた香港人(約300万人)に対して、イギリスの市民権を与えると約束しました。まるで香港の市民に「イギリスに亡命してきなさい」と言わんばかりです。「移民によってイギリス社会の安定が圧迫されている」と問題視されたことがEU離脱の一因となったのに、そのイギリスのEU離脱を推進した政権が、これだけの態度をとっているのです。

香港の国家安全法への批判を強めるイギリスのジョンソン首相 ©︎AFLO

 さらにイギリス政府は、医療器具、医薬品をはじめとして、中国に依存していた工業製品のサプライチェーンを大幅に見直すという声明も出しました。ここまでの反発は、中国政府も予想外のことだったと思います。

「中国は欧州を失った」離反するフランス、ドイツ

 イギリスのこうした動きは全欧的そして世界的な広がりを見せています。イギリスと歴史的に縁の深い、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの「アングロスフィア」(ここでは、米英の価値観や社会観念、あるいは経済・金融のネットワークや伝統的な安全保障の絆などを中軸として協調する国々のグループ、その圏域というくらいの意味)と呼ばれる国々の中核である英語圏5カ国(「ファイブ・アイズ」と称される)の政府が、香港の国家安全法に反対する共同声明を出すなど中国に強く抗議しています。

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 そして、この動きは、単なる抗議にとどまらず、世界の勢力図を塗り替えかねない可能性があります。というのは、この「アングロスフィア」の動きは様々な点で今の国際情勢の流れを決定づける影響力を持っているからです。

 実際に西ヨーロッパの国々はその後イギリスに倣って追随の動きを見せ始めました。フランスのマクロン政権では、5G用のファーウェイ工場建設を白紙化しようとする動きが起こっています。

 ドイツもこの数カ月で態度をガラリと変え、欧州議会で対中関係を担当する有力ドイツ政治家は「今回、中国はヨーロッパを失った」とまで明言しました。また、ドイツの大手メディア、アクセル・シュプリンガーのCEOマティアス・デェップナーは「我々には今や根本的な政治的決断が求められている。中国か米国か。両方につくことはできない」(「ヨーロッパは米中いずれかを選ぶしかない」『ビジネス・インサイダー』5月4日)と語り、アメリカの側に立って共に中国に対峙するしかないと主張しています。実際、6月19日、欧州議会は中国による香港の国家安全法の導入に対し非難決議を行い、国際司法裁判所に提訴し、あわせて中国への制裁措置に踏み切るよう求めました。