中島健人本人にも、あの洗練された美しいルックスにも関わらず、「事務所に入る前はそんなにモテるほうではなかったのでは」と感じさせる、どこか漂う童貞性がある。そこが中島健人のどんなにキザな台詞を言っても嫌味にならない人間味であり、『銀の匙 Silver Spoon』のような、イケてない役をやらせてもハマるなど、演技に幅の広さを与えているのかもしれない。実際、本人も「僕はどっちかというと太陽族ではない」(週刊朝日 2020年4月17日号)と発言している。
また、余談だが、本間快の大卒だが「そこそこ優秀なとこ」を出たという設定は、中島本人の明治学院大学を卒業したという経歴とも重なるものだ。
「死ぬなよ!」と叫ぶ平野紫耀と「一ノ瀬次郎」
一方、平野紫耀演じる一ノ瀬次郎はどうか。本間快に比べて、テンションも高く明るい次郎。快と授業中に私語をしていても怒られるのは快のほう、というのはジャニーズJr.の中でもエリート街道を歩みつつも、受けた嫉妬が少なそうな平野本人に通じる。快ほど思慮深くはないが、正義感は強く、危険にも自ら飛び込んでいく役どころだ。
平野本人はと言えばバラエティでの数々の珍回答や発言で、すっかり「天然キャラ」とされているが、バラエティ番組でいじられているとき以外の発言は、それなりにしっかりとしている。その筆頭がドキュメンタリー『RIDE ON TIME』での「コンサートで僕と目が合わなくても、僕を見てくれてる人とか、僕と関わってくれてる人にはなるべく死なないでもらいたい」という発言だ。
コンサートの最後にファンに向かって「死ぬなよ」と叫ぶ平野。なぜ、ハッピーなコンサートの最後を締めくくる言葉が「死」なのか。「僕の身内とか友達とかでも死んじゃった人が多いので」と語り「すっごい死んじゃうんだもんな……」とうつむきがちに語る以外、そこでは多くは語られない。だが、『未満警察』の中で、次郎が、自分の兄の死を負ったからこそ、誰かを守ろうとする人物になった……という描写がされたときに、そんな平野の発言がよぎった。
ジャニー喜多川が作りたかった“ジャニーズアイドルとしての王道”
2人とも王道のアイドルのようだが、「童貞性」や「死」の陰があり、どことなく“負をおった上で光の当たる場所に立っている”人に見える。ちなみに中島はデビュー当時、「YOUは笑っちゃいけないよ」とジャニー喜多川から「笑顔禁止」を言い渡されていたという(※日本テレビ『スッキリ』7月2日)。アイドルで「笑顔禁止」とは王道のアイドルのイメージとはかけ離れたアドバイスである。
底抜けに明るいわけではなく、負をおった上で、それでも光のあたる場所に立つアイドル。それはもしかしたら、ジャニー喜多川の本当に作りたかったもので、“ジャニーズアイドルとしての王道”なのかもしれない。
そう考えると、堂本剛も亀梨和也もどこかに負がある。堂本剛は「自分が自分で生きられない日々に負けそうな日々が続いた時期があった」などと発言しパニック障害になったことを公表している。『野ブタ。』の脚本家・木皿泉は、「描いているうちに、人の寂しさがテーマになっていったのは、修二役の亀梨さんが引き出してくれたから」と、亀梨和也に漂う寂しさが作品を引っ張ったと証言している。だが、そんな負をおった2人が、従来のジャニーズの枠を越えて、アイドルとしての大ブレイクを果たしたことは言うまでもない。
中島健人と平野紫耀。“ジャニーズの王道の負”が掛け合わさったとき、きっと新たなプラスの奇跡が起きていくはずだ。