数年前、東北地方の公立高校で、同級生に対する強制わいせつを疑われ、自白を強要された男子生徒が自宅で自殺未遂をした。被害を訴えた女子生徒は警察に被害届を出したが、事情聴取で被害にあった内容が二転三転したことなどから、男子生徒への嫌疑が晴れた。
しかし、不適切な指導が生徒を自殺にまで追い詰めるリスクについて、十分に認識されているとは言いがたい。
開口一番に「お前、やったんだろう」
2017年2月、学校から男子生徒・田島学さん(仮名)の家に「お子さんが大変な事件を起こした」との電話があった。母親が学校に駆けつけたところ、学さんは長時間、保健室に軟禁状態で、トイレにも行けない状態だった。学さんにとって苦手な先生が指導にあたったために、正直に本当のことが言えず、事実とは違う内容を認めたという。
「午後2時半ごろ、体育の授業中に保健室に呼び出されました。バスケットボールの授業でしたので、半袖短パンだったのですが、『急いで来い』と言われましたので、そのままの服装でした。生活指導の先生2人と、養護教諭がいました。そして、2人から開口一番に『お前、やったんだろう』と言われました」(学さん)
一体、何が疑われたのか。
同じクラスで、共にいじめに遭っていたBさん
学校側が女子生徒Bさんから聞き取った話によると、2016年12月ぐらいに学さんとメールアドレスを交換した。その直後の夜中に〈(Bさんの)裸を見せて。今日一緒に帰るときに、図書館行く途中、駅のトイレでパンツだけでもいいから〉とのメールが届いた。そのときは断ったが、別の日に、図書館の駐輪場で学さんがズボンを下ろした。そして、3学期になり、音楽室にいたときに胸を触られた、との内容だった。いずれも証人がいない出来事だった。Bさんの話をもとに、担任は「強制わいせつだ」と迫った。
学さんにとっては身に覚えのない話ばかりだった。
生活指導担当C「わいせつなメールを送ったのか?」
学さん「トイレでパンツを見せて、とは送っていない」
生活指導担当C「図書館の駐輪場でズボンを下ろしたのか?」
学さん「下ろしていない」
いったい、なぜ、こんなことになったのか。そもそも、学さんもBさんも同じクラスで、共にいじめに遭っていた。そのため、学さんは精神科に通っている。その後、担任がいじめの仲裁をしたところ、表面的には止んでいたが、事実上いじめは続いていた。いじめられているBさんを学さんが助けることもあった。