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 この状況を打開しようと、弁護士にも相談した。近所に弁護士がいないため、車で片道2時間の事務所に出かけた。しかし、「学校に謝ってしまえばいいじゃないか?」と言われたという。「そういうことじゃない」と父親は思った。学さんは「無実が証明できればいいと思っていたんです。それに、自主的な休みの扱いも納得できませんでした。しかし、弁護士にもこんな扱いをされては信用できません」と振り返る。

 他の弁護士を探す選択肢もあったが、また、片道2時間をかけて、探せないかもしれない。これでは「息子が精神的にもたない」と感じて、諦めた。結局、学校の不適切な対応に対して、闘うことよりも、転校をすることを選んだ。

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生徒指導を起因とする自殺や自殺未遂はあとを絶たない

 文科省は、2008年2月、「指導が不適切な教員に対する人事管理システムのガイドライン」を出している。また、2010年2月の「高等学校における生徒への懲戒の適切な運用の徹底について」(通知)では、「指導の透明性・公平性を確保し、学校全体としての一貫した指導を進める観点から、生徒への懲戒に関する内容及び運用に関する基準について、あらかじめ明確化し、これを生徒や保護者等に周知すること」などとしている。さらには2010年3月に作成された「生徒指導提要」では、教員に対して事実確認の重要性を述べている。

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 しかし、訴訟にもなった福井県池田町での中学生の自殺をはじめ、再発防止対策検討委員会が設置された鹿児島県奄美市の中学生自殺、控訴審となった北海道立高校の吹奏楽部顧問による指導後の自殺など、生徒指導を起因とした自殺や自殺未遂、精神的な健康への影響はあとを絶たない。

取材に応じてくれた田島学さん(仮名、左)と父親 筆者撮影

 今回、学さんが筆者の取材を受けた思いについてこう語る。

「学校と向き合ってくれた父には感謝しています。ただ、父も体を壊した時期もありました。僕だって、学校には行って、授業を受けたかったんです。弁護士は最後に『和解する気になったらきてください』と言っていました。その件もあって、事件の話をするのも嫌になりましたが、今回は、高校を卒業したこともあって、話をさせてもらいました」