さらには、国会議長が40年間住んでいるソウル江南のマンションはこの4年間で23億8000万ウォン(約2億1350万円)も高騰し、現在は60億ウォン(約5億3800万円)の売却価格がついていることが報じられ、「一般人からすると、腹が痛い」と前出記者は話す。この「腹が痛い」というのは韓国で、「妬ましい」という意味で、歯ぎしりするような悔しさも入り混じった表現だ。
そして、この“腹が痛い現象”が実はソウルのそこここで起きている。
例えば、中小企業に勤める50代の知り合いはコツコツと貯めた資金で、5年前に念願のマンションを購入した。広さは100平方メートル。ソウルの中心部からも地下鉄などで30分圏内の好立地。
ただ、「孟母三遷の教え」の韓国では名門大への進学率が高い塾を求めて引っ越しすることが多く、立地として人気があるのはそんな塾がある地域で、人が集るため自然とマンション価格も高くなる。この知り合いのマンションは周りに有名な塾もなく、当時はそれほど不動産価値は高くなかったそうだ。
ところが、江南地域の不動産が高騰しすぎて、家を求める人が他の地域になだれ込み、知り合いのマンションがある地域にも人が集ってきた。7億ウォン(約6280万円)弱で購入したマンションの公示価格はいまや15億ウォン(約1億3400万円)に跳ね上がったという。 「あの時買っておかなかったら家なんて遠い夢になるところでした」と知り合いは言う。
「会社では、お互いだいたいどこに住んでいるか知っていますから、同僚はみんなそれぞれの家を検索して不動産価格がどれくらいかを調べている。
あいつのところは上がっているなあとか複雑な思いで会話しながら、私も江南に物件を買っておけばよかったと思うし、あちらの価格が上がると腹が痛いですが、自分の物件はもっと上がってほしいですし。まだまだ上がりそうなので、売らないで踏ん張っているところです」
議員に「不動産契約書を提出しろ」というお達しが
ソウルでは人々が家を求めて渡り歩き、そこここで不動産価格が上昇している。
40代の会社員(女性)の知り合いは言う。
「政府はソウル市郊外に住めと言って再開発も進めていますが、わたしたちはみんなソウルに住みたいんですよ。それも低層アパートじゃなくて高層マンション。高すぎて買えないから、仕方なく郊外に引っ越すものの、なんとかソウルに戻ろうと頑張っている」
この大騒ぎに、与党「共に民主党」は議員の所有不動産実態調査に乗り出した。しかも、「不動産契約書」を提出しろという異例のお達しが。これにはさすがに「財産権の侵害ではないか」(中央日報7月8日)という声も上がったという。