「文在寅 支持撤回」 

 7月7日、こんな検索語が韓国の大手ポータルサイトに登場した。 

 韓国・ソウルのマンション価格は文在寅政権になったこの3年間で52%高騰したといわれており、積もりに積もった国民の不満がついに爆発。マンション価格が上がれば上がるほど、文大統領の支持率はじりじりと下がり、5月1週目には71%もあった支持率は7月第1週には50%にまで落ち込んだ(世論調査会社「韓国ギャラップ」)。 

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©時事通信社

政権幹部が保有するマンションの価格が7倍以上に

 支持率下落に、文大統領も慌てて、、「最高の民生課題は不動産対策」(中央日報7月6日)と不動産対策に発破をかけていたのだが。世論調査会社関係者はこう解説する。 

「国民にとっては、例えば、南北間の問題や日本との問題などは正直、生活にすぐに影響を及ぼすものではない。しかし、住まいは直接関わってくる切実な問題で、上がるばかりのマンション価格は今や全国民の関心の的。特に30~40代の今の一番の悩みは家を買えない、借りられないこと。不満が爆発するのも無理はない」 

 国民の不満が爆発する引き金となったのは、青瓦台(大統領府)秘書室長のしくじりだ。6月17日には、文政権に入って21回目となる、マンション保有者への税金引き上げやマンション購入時の借り入れ規制などが盛り込まれた不動産対策が発表されたが、焼け石に水。マンション価格は下がる気配すらなく、逆にわずかながら上昇する始末。

 この状況に秘書室長は高官らに、「家を売れ」などと檄を飛ばしていたのだが、自身のマンション売却が問題化し火に油を注いだ。中道系紙記者が解説する。 

「秘書室長はソウルの江南(富裕層が住む不動産高価格地域)と、自身の選挙区である清州市にそれぞれ1つずつマンションを所有していました。今の韓国の不動産対策は江南のマンション価格を安定させることが大前提ですから、秘書室長がマンションを売ることが報道された時、周りは当然江南のマンションを売るだろうと思ったし、本人もそう公言していた。

 ところが、家族に留められたとあっさり翻意。当の行政がこれですから、開いた口が塞がりません。8日になってソウルの家も売ると発表しましたが、嘲笑もの。民心の離反は深刻ですよ」 

盧英敏・秘書室長 ©時事通信社

 正当に購入した不動産であれば、そのどちらを売却しようが問題はないとも思うのだが、そうはいかないのが韓国の不動産事情だ。 

 韓国の投資先で一番の人気が不動産だ。なかでもソウルの江南地域はその価格が群を抜く。高度経済成長期に入った1980年代頃から、ソウルは人で膨れ始め、今や韓国全人口のほぼ5分の1の人が住む一極集中都市に。

 住宅不足が叫ばれて、平屋の韓屋(ハノク)は低層アパートとなり、それがさらに上に伸びて高層マンションが林立する街へと変貌し続けてきた。それに伴い、マンションの価格も右肩上がり。どの政権も不動産対策に頭を悩ませてきた歴史がある。

 余談だが、アカデミー賞に輝いた映画『パラサイト 半地下の家族』では韓国の半地下が注目されたが、対北戦争に備えての防空壕という説の他に、高度経済成長期の急激な住宅不足から、駐車場として作ったスペースを家にしたという説もある。 

 秘書室長が所有しているソウルのマンションは、広さ約40平方メートルで築32年の古びた物件。韓国の中流階級の住居の広さは100平方メートル以上が平均といわれるから、比較的手狭だが、2006年に約2億ウォン(約1800万円)で購入したものが、現在提示されている売却価格はなんと15億ウォン(約1億3400万円)にまで値上がりしているのだ。ちなみにソウルのマンションの中位価格帯は9億ウォン(約8000万円)である。