偽のクレジットカード150枚ほどを展示
参加アーティストはどのようなコンセプトで作品を作ったのか。
アートユニット「skydiving magazine」としても活躍し、映像作家、グラフィックデザイナーでもある村田実莉さんは、作品「GODS AND MOM BELIEVE IN YOU」を出展。作品タイトルが印字された偽のクレジットカード150枚ほどを、財布やインド通貨と共に展示した。
「財布をすられるような、生活に潜む『盗む』がコンセプト。昨年10月から住み始めたインドでは宗教観を肌で感じていて、今回のタイトルとクレジットカードにも神という単語で作品に現れた」(村田さん)
アートは本来すべての人にとって身近な存在。ただ、関心がない人には難しく感じる部分もあり、アーティストのコミュニティも内輪になりやすいもの。今回はイベントの要素があり、面白がって気軽に来てくれることを期待しているという。
「盗んだ後は、貴重品を盗まれないためのお守りとして、財布やスマートフォンなどと一緒に身に着けてほしいですね」(村田さん)
メルカリ転売も「時代を感じる着地点」
加賀美財団コレクションさんは、「ギャラリーへ持ってくる途中に盗まれました」と書かれた紙を壁に貼り付け、「Untitled」というタイトルで出展した。
「盗まれるのは癪だから、盗ませないようにするにはどうすればいいかを考えた。一般的に思いつくのは運べないほど重たい作品や壁に張りつけた作品だが、すでに盗られた後だから誰にも盗めないでしょう」(加賀美財団コレクションさん)
終了後、展示した紙は剥がされ、痕跡は残っていない。
中村譲二さんは作品「モナリザを盗んでみたい人の為の」で、来場者に有名な絵を盗む体験を提案した。
「盗んだ後は、部屋に飾って展覧会を思い出すきっかけにしてもらえると嬉しい。もちろん、捨ててしまう人やメルカリに出品する人もいるだろうけど、それも時代を感じられる面白い着地点の一つだと思う。これからの展開が作家として楽しみ」(中村さん)
あっという間に消え去った10の作品たち。いま頃、どこで過ごしているだろうか。アート泥棒たちにはぜひ、作品と一対一でじっくりと向き合い、作品と会話する時間を楽しんでほしい。
写真=ゆきどっぐ