“新型コロナ白書”発表…「隠ぺいとの指摘は極めて失礼」

新型コロナウイルスをほぼ抑え込み、無事に全国人民代表大会(全人代)を終えた中国は6月、新型コロナウイルスに関する初の白書を発表した。

 

白書は「ウイルスとの戦いで重大な戦略的成果を収め、世界の公共衛生安全を守るために重要な貢献をした」などと中国の一連の対応を自賛した。さらに「中国は一貫して公開、透明、責任原則を堅持し、国際社会に疫病情報を直ちに公表してきた」「中国が疫病情報と死者数のデータを隠ぺいしたとのいわれなき指摘は、14億の中国人民、ウイルスに命を奪われた逝去者、数百万の中国の医療関係者に極めて失礼であり、中国は断固として反対する」などと強調している。

中国政府は「新型コロナウイルス肺炎感染に立ち向かう中国の行動」と題した白書を発表した

その上で、白書は2019年12月27日から2020年5月28日に全人代が閉幕するまで、中国がとった対応を時系列で説明している。2020年1月19日までの期間を第1段階と位置づけ、「疫病発生に即刻対応」との小見出しをつけた。感染発生後の対応については、「湖北省武漢市で原因不明の肺炎の症例が見つかり、中国はすぐに報告し、迅速な行動をとった」として、以下のように連日の対応ぶりを記している。

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12月27日:湖北省中西医結合医院が、武漢市江漢区疾病予防センターに原因不明の肺炎患者の発生を報告。

12月30日:武漢市衛生健康委員会が、管轄区域の医療機関に「原因不明の肺炎患者の適切な治療に関する緊急通知」を通達。

12月31日未明:国家衛生健康委員会は武漢へワーキングチーム、専門家を派遣し、適切な対処を指導し、現地調査を実施。武漢市衛生健康委員会は、公式ウェブサイトで27人の感染者が見つかったことを通知。

              …(中略)…

1月3日:武漢市衛生健康委員会は、公式サイトで原因不明のウイルス性肺炎患者44人の発生を公表。国家衛生健康委員会と湖北省衛生健康委員会は、診察・治療のためのガイドラインを策定。この日から定期的に、世界保健機関(WHO)や関係国及び香港、マカオ、台湾に対し、速やかに自発的に感染症の情報を伝える。

              …(5月28日まで続く)……

この時系列の対応を見ると、中国政府が日を置かずに矢継ぎ早に対応し、WHOなど関係機関に適切に情報提供してきたように見える。しかし、12月30日、武漢の医師らが同僚に警鐘を鳴らし、その後、公安当局が「デマ」として処分したことなど、不都合な内容はスルーされている。武漢で感染が広がってから概ね半年が経つ。この時期に起きたことを改めて当時の公式発表、中国メディア報道などから振り返ってみた。

「無断で対外的に公表してはならない」

12月30日に出した「原因不明の肺炎患者の適切な治療に関する緊急通知」は、武漢市内の医療機関向けの通達だ。そこには「外来急診管理を強化せよ」「院内感染防止を強化せよ」などとは書いてあるものの、当時の具体的な感染状況やリスクなどは書かれていない。また、情報を適切に上部機関に上げるよう指示する一方で、「無断で治療情報を対外的に公表してはならない」と釘を刺しており、情報の流出を警戒していたことが伺える。