のちの論文で判明 桁が違った実際の感染者数
この頃になると、実際は公表されているよりもかなり感染が広がっているのではないか、と疑いの目が向けられるようになっていた。中央政府は1月18日に衛生当局専門家チームのリーダー、鍾南山氏を武漢に派遣した。鍾氏は現地調査を行い、20日に北京で李克強首相に状況を報告後、中国中央テレビの取材に対し、「人から人に感染する」と初めて明らかにした。さらに、既に14人の医療関係者の感染が確認されていることも明かした。
後に、中国疾病予防コントロールセンター(CDC)などの専門家チームが、2月17日に中国の医学誌に掲載した論文には、12月31日までの感染者は全国で104人、1月1〜10日には653人、11〜20日には5417人確認されていたというデータが掲載されている。
全国といってもこの時期の感染者はほとんどが武漢に集中している。ちなみに武漢市衛生当局はHPで12月31日時点での感染者は「27人」としており、1月21日発表の「20日24時まで」の累計でも「258人」と一桁少ない。
また、武漢市が一貫して「確認できていない」と主張していた医療関係者の感染についても、同じ論文で、武漢市内だけで1月1~10日の間に18人、11~20日の間には233人確認されていたことが指摘されている。
人民日報も環球時報も…当時の当局対応をバッシング
当時の地元当局の対応について、人民日報は1月21日付の社説で「情報公開が十分に迅速、正確でなく、“大胆”にも病人を外出させ、“大胆”にも感染源を営業させ、“大胆”にもパニックを避けるため感染リスクの高い人たちにマスクを着用させなかった」と当時の地元当局による情報公開のあり方や対応ぶりを問題視している。
中国共産党系の環球時報も1月22日の社説で、「武漢の実際の対応策は明らかに遅く、全面的な隔離治療や全ての潜在的な感染ルートの封鎖が行われず、ウイルスが国全体に広がってしまった。これは痛い教訓だ」「我々が心配しているのは、一部の地方政府や部門が“社会のパニックを回避する”ことを優先事項として政策を策定していることだ」などと、当時の地元当局を批判している。