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高瀬 怖いですよ。本を子どもに渡してしまっていたら、いざ本当にそのセリフを親が言わなければいけないとき、たとえば「第70講」の<ほかにも良さそうな学校を探しておくから、まかせといて>なんかを、言えなくなっちゃうじゃないですか。「ああ、あの本に書いてあったことを言ってるのね」って子どもに見抜かれちゃう。その次の<どの学校も魅力的だよね。ぜんぶ受かっちゃったらどこに行くか迷っちゃうね>というのも、親がさりげなく言ってあげるべきことで……。親がいいところを見せるべきときに、こういう言葉が自分自身から出てこないというのは、親子関係という観点からするとどうなんだろうと。本をそのまま子どもに渡すんじゃなくて、自分の口で伝えてほしいですよね。中学受験って、親子でできる最後の二人三脚の挑戦だと思うので。

中学受験生に伝えたい 勉強よりも大切な100の言葉』(第70講)より ©高瀬志帆/小学館「週刊ビッグコミックスピリッツ」連載中 

「塾って裏ではどうせこう言ってるんでしょ」

おおた 逆に言うと、ここに描かれているようなことを親自身が納得して中学受験に取り組んでいれば、実際にこんなキザなセリフを言わなくても、子どもにもその価値観はどこかで伝わるはずだと思うんです。だから「子どものやる気を引き出すため」みたいな下心に利用されたら嫌だなあと思っています。

高瀬 本当ですよね。私の漫画も「ビッグコミックスピリッツ」という大人向けの雑誌での連載漫画なのですが、そこをあまり考慮せずにそのまま渡してしまう親御さんも多くて……。

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おおた 大人の世界を覗きたいという気持ちを子どもたちがもつことは当然あるとは思いますが、それってあくまでも覗き見であって、親が子どもに「はい、読みなさい」って渡すのは作者の意図とは違いますよね。もちろん作品をどう読むかは“作者の意図”なんて関係なく読者の自由なんですが。

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高瀬 中学受験が終わって、中2、中3で読んでみるというのはわかるんですけど、これから中学受験を始める小3、小4とかで読ませちゃうひとがいるみたいなので、それは早いなっていう。塾との信頼関係もつくっていかなきゃいけない時期なのに、「塾って裏ではどうせこう言ってるんでしょ」みたいに思わせちゃったらどうするんでしょう。そういうところも含めてこの本にはちゃんと真意が書かれているので、安心しました。

おおた 高瀬さんにそう言ってもらえると、ほっとします。

(【続き】“不幸にも”第1志望に受かり続けた親子の末路……中学受験「良い先生、良い親」の条件とは へ続く)