人気の中学受験漫画『二月の勝者』の名場面と「中学受験の親が子どもにかけたいセリフ」を掛け合わせた異色のコラボ本『中学受験生に伝えたい 勉強よりも大切な100の言葉』。著者は教育ジャーナリストのおおたとしまささん。教育関連書籍を60冊以上執筆している中学受験の専門家だ。
『二月の勝者』の作者・高瀬志帆さんとおおたさんに中学受験「良い先生、良い親」の条件について話してもらった。(全3回の2回目/#1、#3も公開中)
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「そもそも『小学生が毎日塾に来て座ってる』こと自体がすごくね?」
おおた この本を書くにあたって、『二月の勝者』の中から100のシーンを選ばせてもらうために、漫画を何往復も読み返しましたが、なかでも特に好きなコマを3つ挙げたいと思います。
高瀬 お願いします。
おおた まず1つめは、この本の「第14講」の挿し絵として使わせてもらっている橘先生の「そもそも『小学生が毎日塾に来て座ってる』こと自体が、すごくね?」というセリフです。そこまでのストーリーで、橘先生って残念な塾講師みたいに描かれていることが多かったのですが、ここでは「いいこと言うじゃん!」って思わず見直しちゃうみたいな。
高瀬 彼のいいところは「小学生男子の気持ちに共感できる」というところなので(笑)。
先生や親は子どものどこをホメるべきか?
おおた もう1つはコミックの第1集に収録されている、生徒の三浦佑星くんが「ちょっとしたひと言が、すっごく嬉しかったんだ」と言うシーン。この本では「第32講」で使わせてもらっています。これって教育の現場を見ているとときどき目にする光景なんです。ここぞというタイミングで大人が最低限のことをぽろっとひと言かけるだけで、子どもが「いまのそれ、うれしい!」って目を輝かせる瞬間。
たとえば「いもいも」という私塾をやっている井本陽久さんという先生はその達人で、彼についてのルポルタージュ『いま、ここで輝く。』という本ではそういうシーンをたくさん書かせてもらいました。子どもたちっていつも伝えたいことがあって、気付いてほしいことがあるんですよね。それにどれだけ大人が気付いてやれるかってとても大事だと思うんです。この瞬間がときどきあれば、子どもは絶対にねじ曲がらない。