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「コロナは他人を出し抜くチャンス?」激変する中学受験事情、親子が“壊れない”ための心構え

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「学力の遅れ」か「生徒の健康」か

高瀬 それぞれの学校が、学力の遅れを気にしているのか、生徒の健康を気にしているのかが、すごくはっきり分かれたんじゃないかと思うんです。私の価値観では、命を大事にするほうを望みます。ですから慎重な姿勢を見せてくれた学校のほうが個人的には好感がもてます。オンライン授業をするにしても、慣れない学習環境でさまざまなストレスや疲れを感じる生徒に対してどれだけ配慮をしてくれていたかを見るべきかなと思います。カリキュラムをこなすためとか、大学受験勉強で遅れを出さないためとか、そういうことに主眼を置いてオンラインでもガンガン進めるぞという学校が本当にいいのかというとそうではないと思うんです。

おおた 加えて言うならば、ここぞとばかりに我が校のICT教育をアピールするチャンスだぞみたいな学校もありますよね(笑)。

高瀬 はい。でもそこは保護者側にも責任があって、学校説明会で「ICTを積極的に取り入れています」「英検をガンガンとらせます」「海外に行きます」と言ってIT企業の売り込みみたいなプレゼンをされると、そういう時代なのかななんて思ってしまうことがあると思うんですよね。でも本質的にはやっぱり、いままさにこのような世界的な危機を迎えたなかで、子どもたちにどんな大人になってほしいかと考えると、健康とか命とかを第一に考えられるひとになってほしいんですよ、私の個人的な主観では。

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おおた 大事な観点ですね。

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「文化祭にママ友と連れ立っていくのはやめてください」

高瀬 こういう状況下で、ひたすらいつも通りの授業をオンラインでこなしていくのか、「いまのこの社会についてどう思う?」というディスカッションをオンラインで行うのかって、教育として全然意味が違うじゃないですか。やっぱり何を大事にして学校を選ぶのかという信念をもたないとダメだろうなと思います。だから、この本の冒頭にあったように、メディアの情報を鵜呑みにするのではなくて、自分で噛み砕いて親子で話し合いましょうというのは、学校選びにおいても同じですよね。

『二月の勝者』の中でも、文化祭にママ友と連れ立っていくのはやめてくださいという話を描きました。ひとの意見を参考にするのは大切ですけれど、必ず自分で一度咀嚼しないといけないと思います。

おおた 子どもには「自分の頭で考えられるようになりなさい」と言いながら、親が「で、先生、こういう場合、結局どうしたらいいんですか?」とか「おおたさん、結局どこの学校がいちばんおすすめですか?」と聞いちゃうみたいな(笑)。