約3か月遅れで始まったプロ野球の序盤は巨人・原辰徳監督の話題で持ちきりとなった。

 6月19日の阪神との開幕戦に勝利して球団通算6000勝を達成。7月4日の中日戦では自身が巨人歴代2位となる監督通算1034勝を記録して、長嶋茂雄終身名誉監督に並んだ。監督通算14年目での達成で、今季中にもV9を指揮した川上哲治の1066勝の更新も確実となっている。

 一方、率いるチームも開幕からセ・リーグ連覇に向けて好スタートを切ったが、一方で注目されるのが新型コロナウイルスの感染が拡大し異例のシーズンとなる中で発揮された球界のリーダーとしての役割だった。

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原辰徳監督 ©文藝春秋

坂本・大城の2選手が感染判明

 巨人は6月3日に坂本勇人内野手と大城卓三捕手の2人がPCR検査の結果、新型コロナウイルスへの感染が判明。10日間の隔離入院処置を受ける事態があった。開幕直前に大黒柱を含めた主力選手を襲ったアクシデントは、連覇に向けて暗雲を漂わせるものだった。しかしこの2人の感染判明は、実は原監督の「プロ開幕に当たって安全、安心の確保が絶対条件」という信念がきっかけとなったものだったのである。

「いいにつけ悪いにつけ、私たちプロ野球選手というのは皆さんに見られる立場の人間です。だからこそあらゆる振る舞いに責任もある。そう考えたら野球が動き出すためには、まずスタッフ、選手、フロントも含めて関わる人間がきちっと感染対策をすること、安全を確保した練習場で準備を整えていくことだと思っていました」

 そのために原監督が球団に直談判して行ったのが選手、スタッフ、関係者全員の抗体検査の実施だった。

プロ野球は6月19日に無観客で開幕 ©共同通信社

原監督自ら検査実施を求めた

 開幕へと準備が進む5月10日前後に、まず原監督が自ら密かに抗体検査を受けた。そこで陰性の結果を受けると、その足で東京・大手町の球団事務所を訪れて、今村司社長との直談判で全員の検査実施を求めたのである。

 球団もすぐにこの求めに応じて検査の実施を決定。5月末にコーチ、選手、フロントスタッフ全員が実施した結果、坂本、大城の2選手を含む4人に新型コロナウイルスの抗体が確認された。急遽、その4人がPCR検査を受診した結果、2選手から感染からある程度時間が経過してから獲得するIgG抗体が検出されて感染履歴が分かったという経緯だった。