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口臭はないのに「自分の口は臭っている」と思い込んでしまう

 タバコやコーヒーが口臭の原因になると思っている人もいるが、これは口臭とは別物だ。

「たしかにタバコを吸ったりコーヒーを飲んだ後には臭いがしますが、これはタバコやコーヒーによる一過性の臭いであって、口臭ではありません。もちろん元から口臭がある人であれば、それと混じり合って異臭を作り出しますが、それなら舌の清掃をすればいいだけのこと。気にする必要はありません」

 それより問題なのは、口臭はないのに「自分の口は臭っている」と思い込んでしまうケースだ。

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 ガスクロマトグラフィーで測っても臭いの原因物質は検出されず、人の鼻で嗅いでも嫌な臭いはしない。なのに当人だけが口臭を自覚してしまうのだ。口臭外来を受診する患者の約2割がこれに該当するという。

「医学的に“自臭症”と呼ばれる病態で、恐怖症の一種です。よく話を聞いてみると、会話をしている相手が鼻を抑えたとか、自分が部屋に入ると窓を開けられたとか、他人の行動を必要以上に気にしているだけで、実際に口臭を指摘されたことはない。事実、そんな人ほど口の中はキレイなんです」

 そんな場合、小川教授は、ガスクロマトグラフィーの数値を見せて口臭がないことを客観的に説明し、場合によっては亜鉛の成分が含まれるスプレーを処方し、人と会う直前に舌に噴霧するように勧めることもあるという。

「亜鉛は臭いをマスキングする作用があるので、人と話す直前に噴霧することで安心感は得られます。そうやって少しずつ馴らして自信を付けてもらうようにしています」

 口臭、というより自臭症が原因で“うつ”になってしまう人もいる。口の臭いは馬鹿にできないのだ。

©︎iStock.com

舌の健康を怠ると、新型コロナ重症化のリスクが高まる?

 最近は、オーラルケアと新型コロナウイルスの関係性を探る研究も進んでいる。当然そこには舌も関与する。

「舌の上には歯周病菌もいます。この菌が肺に入ると肺炎を引き起こすし、最近では新型コロナウイルスによる肺炎と重なると重症化のリスクを高めることも指摘されています」

 そう語る小川教授は、毎朝鏡で舌の状況を観察することを心がけてほしい、と呼びかける。

「疲労など体の状態は、舌の表面の汚れが増悪にも関係します。きちんと清掃しているのに普段と舌の表面が違う、特に黄色っぽい舌苔が多く見られるときは体調に気を配る必要があるのです」

 健康状態を推し量るバロメーターとして、舌は意外に役に立つ。

 これを機に、ちょっと注目してみてはどうでしょう。