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「お弁当が食べたい」「炭酸水を飲みたい」

 コロナ病棟を担当した別の20代の女性看護師Bさんも「苦しんでいる人を救いたい」という一心で看護に取り組んでいたが、彼女が強いられたのは医療とはかけ離れた“コロナ患者の世話係”だったという。

「軽症だったホストのコロナ患者からは、『食事が足りない』『味付けが薄い』と不満が出ていました。夜勤中だった深夜2時にナースコールがなり、『お腹が空いたからカップラーメンを買ってきて』『お弁当が食べたい』『炭酸水を飲みたい』などと言われることが何度もありました。コロナ患者は自由に院内を移動できないため、紙に要望を書いてもらい、セーフティーゾーンの看護師に代理を頼んで院内にあるコンビニへ買い出しに行ってもらうことになります。

©文藝春秋

 病室にはお湯がないので、ナースステーションからポットにお湯を入れて病室に持っていき、防護服を着ながらカップラーメンの容器にお湯を注いでいるときは、『私は何をしているんだろう』と涙が溢れてきました。本来であれば、入院している身なのでカロリー計算されている病院食のみを摂ってもらうのが原則です。しかし、他の病棟の患者は我慢しているのになぜかコロナ病棟だけは、そんなワガママに応えることがまかり通っていました。しかし、私たちは医療従事者であって“お手伝いの人”ではありません」

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 ホストのコロナ患者と話す中で、Bさんは新宿・歌舞伎町で感染が絶えない原因として、彼らの生活環境が大きく影響していることに気付いたという。

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「入院中のホスト患者が話していたのですが、若手のホストは新宿にある寮のようなマンションの一室に5人くらいで共同生活しているそうです。そこで咳や熱があったりする人がいるのに同じ空間で食事をしたり、雑魚寝したりしている。退院してもお金に困窮しているホストは生活がかかっているので、その足でお店に行ってしまうんです。これでは入院と退院の繰り返すばかりで、歌舞伎町の『負の連鎖』は終わるはずがないんです」

 現場からの悲鳴は、病院側に届いているのだろうか。