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 そもそも、Aさんがコロナ病棟に配属されたのは、追い込まれてのことだった。ベテラン看護師の大部分は一般病棟の重要な役職に就いている。かたや新人は力量不足でコロナ病棟の担当はできない。Aさんら中堅クラスの看護師からコロナ病棟担当を選抜せざるを得ないのは、客観的に見ても明らかだった。

 師長が看護師を集めて、「行ってもいいという人は手を挙げてほしい」と希望を募ったが、誰も手を挙げなかったため、後日Aさんは、「コロナ患者の看護は今後の経験や勉強になる」と意を決して受け入れたという。

東京・新宿区にある東京女子医科大学病院 ©文藝春秋

病院でも昼夜逆転のホスト患者たち

 コロナ病棟には80代、90代の高齢者も入院したが、歌舞伎町に近いという土地柄、“夜の街”関連のコロナ患者が大半を占めていた。特にホストの傍若無人ぶりは想像以上だったという。

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「保健所や行政の要請もあり、看護師が感染ルートなどの聞き取りをしなければならないのですが、20代のホスト患者たちは当初、感染ルートが明らかになるとお店が営業停止になってしまうので、何も話してくれませんでした。お店側から口止めされていたようです。でも住所が歌舞伎町だったりするんです。何日かして打ち解けるようになって、『自分はホストで職場は〇〇です』と感染ルートを話してくれる人もいました。

 看護師は朝に患者の検温や症状、便や食事の量をチェックしたりして医師に報告しなければいけません。しかし、ホストたちは職業柄、昼夜逆転の生活なので、病院でも朝起きてくれず、無理に起こすしかありませんでした。病院の食事も『今、食べます』と言いながら、平気で半日以上放置されました。

歌舞伎町も同じ新宿区内にある ©文藝春秋

 また、コロナ病棟の患者さんは、酸素飽和度を測るために『SpO2モニター』という機器を指先に装着してもらっていますが、深夜3時、4時に勝手にモニターを外して病室にあるシャワーを浴び始めたこともありました。すると、ナースステーションにあるモニター計から反応が消えるので、急変したんじゃないかと看護師が慌てて病室に様子を見に行かないといけません」