緊急事態宣言下の4月22日~5月4日に、「文春オンライン」にて、みなさまのコロナ禍のお悩みを募集しました。お寄せいただいた中から全7つのお悩みに、脳科学者の中野信子さんがお答えします(全7回中1回/2回目を読む/3回目以降は後日公開予定)。
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Q 義母は制止しても聞こえないふりして外出します──44歳・会社員からの相談
夫の母(74歳)、夫、私、子ども2人の5人家族です。仕事がら夫は出勤しますが、私は在宅勤務。子ども2人も休校中でステイホームを守っているのに、義母は友だちとランチにカラオケと、不要不急の外出三昧。それがどんなに危険か訴えても聞こえないふりをして出かけていきます。
もう、叩いてやりたい。老人を思わず叩いてやりたくなる私は、何か脳内物質が不足しているのでしょうか。
A お義母様は好奇心旺盛で刺激を求めるタイプのようですね。こういう方は、家の中でじっとしているくらいなら死んだほうがましだとけっこう本気で考えていたりします。慎重派のあなたとは優先すべきものの基準が違うとしか言いようがありません。
刺激を求める人には富を築いたり出世したりする人も多いのですが、危険な目に遭うリスクとトレードオフなんです。私の知り合いにもそういう女性がいて、仕事は成功していますが、骨折したりバイク事故に遭ったりするので心配なんです。
お義母様も同じタイプのようですが、それでも74歳まで無事に生きてこられたことを、まずは寿ぎたいですね。
そんなお義母様に対して、思わず叩いてやりたいような気持ちが出るのは、脳内物質の不足というより、オキシトシンの分泌が過多なのかもしれません。オキシトシンは愛着や信頼感を形成する幸せホルモンとしてお馴染みですが、愛情もバランスが崩れれば憎しみになってしまうんです。