「関西のテレビは吉本と大阪維新の会に支配されている!」とネットに書いてあった。というと、関西に住んでない人は、上沼恵美子や松本人志が橋下徹や松井一郎や吉村洋文相手に、ツッコミ入れて笑いも取りつつ最終的に「大阪はこのお人にまかせるしかないねん!」的に持ち上げる、そういうバラエティがのべつまくなしに関西では流れてる、と思うのではないか。

 確かにそういうのもある。『ミヤネ屋』に吉村知事が出る時の宮根誠司の振る舞いなんかまさにそれだ(宮根は吉本じゃないが)。

2019統一地方選で街頭演説をする吉村洋文氏(左)と松井一郎氏 ©AFLO

 しかし実際はそんなわかりやすいものではない。

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 関西で「テレビによる維新浸透作戦」のカギを握るのはMBS(毎日放送=TBS系列)の『ちちんぷいぷい』と『ミント!』ではないか。関東だと「ゴゴスマ→Nスタ」の時間帯。この時間帯には吉本の芸人が毎日山ほど出る。ロザン、月亭八光、大平サブロー、未知やすえ、間寛平、シャンプーハット、ハイヒール(バラで出る)……関西における吉本とはこれだよ、口の達者なご近所さん的な、今さら吉本と意識もしてない、空気のような存在。

 そして、MBSのこの時間帯は、以前から「維新的なものに対してアンチ側」だった。橋下徹が大阪市長選で負かした平松邦夫は元MBSアナだったし、どちらかといえばリベラルな意見を愚直にぶつけるというのが『ぷいぷい(と関西人は略す)』で、大阪都構想住民投票も『ぷいぷい』は反対の立場に寄っていた。先日『ミント!』に出た橋下さんは「ぼくのことを嫌いな番組」って言ってたぐらいで(アナウンサーは静かに「いえそれは『ぷいぷい』です」と訂正し、「あ、そうだったすみません」と、橋下徹はこういうところはスカッと笑顔で謝る)。

 関西のゆるいリベラル層にとって、MBSの午後~夕方ワイドはわりと安心して見てられる時間帯だった気がする。そこに最近、吉村知事のお話を伺う、というのがしれっと入り込んでるのだ。コロナからこっち、何かあれば吉村さんの声と姿が出てくるし、インタビューも多い。それも双方静かに、つっこみもなく吉村さんのお話拝聴という雰囲気。吉本芸人たちも大人しい。これ、番組がリベラルっぽいのんびりさに溢れてるもんで、吉村さんの言うことをタレ流してる、という感じもしないのだ。こういう午後が続いている。静かに吉村節が浸透していく。

 最初に書いたような、システマチックな陰謀みたいなもんは基本「ない」と思っているが、関西のテレビ局は大阪大好きなので「今、小池都知事に比べて得点高いような気がする吉村さんが地元だしどんどん出てもらおう」とか思っていそうだ。こういう、ぬるい浸透の仕方のほうが深くしみこむ。低温火傷みたいだ。

INFORMATION

『ちちんぷいぷい』
MBS系 月~金 13:55~
https://www.mbs.jp/puipui/

『ミント!』
MBS系 月~金 15:49~
https://www.mbs.jp/mint/